4月文楽公演 昼の部
風邪で2日ほど臥せっておりましたが(でも熱は出てなかった)、今日から復活します。

13日に文楽を見てきました。
今回は豊竹呂太夫さんの襲名披露です。
開演前、ロビーに呂太夫さん本人がいらっしゃってびっくりした~!

まずは襲名を祝う「寿柱立万歳」。
「漫才」ではなく「万歳」。三河万歳に代表される昔の門付芸で、太夫と才三(この二人が今の漫才でいうボケとツッコミです)が、「たくさんの柱を立てて、それを神様に見立てて祝おう」という意味の歌を歌います(そういえば神様の数え方は「柱」ですね)。
万歳ということで、お正月に見た三番叟よりはくだけた雰囲気で、江戸時代の雰囲気がよく出ていたと思います。

そして、「菅原伝授手習鑑」。
文楽を見始めた時からぜひ観たいと思っていた、念願の「菅原」です!
今回上演されたのは物語の中盤~後半。各段それぞれに名前がついていますが、歌舞伎でいうと「賀の祝い」と「寺子屋」の場面ですね。
忠と孝との狭間で翻弄される三つ子の兄弟の悲劇。彼らの父である白太夫の苦しみ(文楽は特に老人の嘆きが胸に迫りますね)。三人の嫁たちの困惑と嘆き。
文楽を見ていて、こんなに「あっという間」と思ったことはなかったんじゃないかと思うくらい入り込んで見ていました。
特に、「寺子屋」は、こんなに悲しい、こんなに辛い話はないと思うのに、なぜか胸を打ちます。
本当は誰もこんな酷いことはしたくないのに、しなくてはならない、その気持ちが心に迫ってくるからだと思います(それはひとえに、太夫・三味線・人形、それぞれからあふれ出る気迫のおかげです)。
また、寺子たちの愛らしさやおかしみがこの悲劇を緩和してくれると共に、健気な小太郎の短い人生を浮かび上がらせます(同じくらいの年の子が…と思うと切ない)。
「菅原」を解説した本を持っているのですが、前半も良い場面がたくさんあるので、次は通し狂言で見たいな~!

「寺入りの段」の前に行われた襲名口上も面白かったです。
呂太夫さんの師匠・越路太夫さんを「文楽で最も恐ろしい」と評したり、海外公演で行ったリオデジャネイロのイパネマ海岸で呂太夫さんがこんがり小麦色に焼けていたという話を披露したり(笑)。
真面目そうに見えるけど、文楽の方たちって実はけっこう面白い?
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初春文楽公演
今年の初芝居は文楽です。
私が見た昼の部は「寿式三番叟」「奥州安達原」「本朝廿四孝」と超豪華な演目ぞろいで、かなり前から楽しみにしていました。
演目と同時に楽しみだったのは、お正月の風情。
国立文楽劇場はどこの劇場よりもお正月らしいお正月を味わえるところでもあります。
正面玄関の門松や、餅花や鏡餅が豪華に飾られたロビー、舞台の上部正面に掲げられた睨み鯛に今年も出会えて感無量でした。

最初の「寿式三番叟」は、おごそかで華やか。
格式の高い演目で、今回は国立劇場開場50周年を記念しての上演です。
いつもは床に並ぶ太夫と三味線も、大人数で正面奥に2段に並んでいて、それだけでも豪華でした。
そして、この式三番叟がなぜ格調高いのかが分かった気がします。
なにしろ、神様の名前がたくさん出てくるし、翁の舞も、天の岩戸の前での神様の舞を再現したものだし、その神様たちが五穀豊穣を願っているという意味の作品なんですよね。おめでたさ抜群です。
二人の三番叟の踊りは実に華やかで軽快。
人間があの踊りをやり続けたら疲労困憊になってしまいますが、人形なのですごく長時間踊ってます(でも時々休んだりするのがカワイイ(笑))。
いかにも新年に相応しくて大満足でした。

「奥州安達原」は、なんちゅう話やとは思いますが(笑)(←しかも、これは長~いお話のほんの一場面。全部のあらすじを調べてみたらかなり複雑で、さらに「なんちゅう話や」度がUP!(笑))、袖萩が可哀想で可哀想で仕方なかった。お母さんの浜夕も可哀想だし、娘のお君も可哀想。
お父さんの傔丈も厳しいことを言っていますが、娘がそばにいても会えないまま切腹しなければならなくて可哀想。
おーい、貞任、いくら正体を隠してても妻の死くらいはちょっと心を動かせよと思うんですが、考えてみれば貞任もお父さんを殺されてるし、一家離散してるし、けっこう悲しいんですよね。悲しみのあまり、なりふり構わぬ復讐の鬼になっているのかも。
それでも、鬼の目に涙というか、最後には幼い娘のお君と別れ難く思ったりするので、普通の人間としての気持ちは持ち合わせているんですよね。
それにしても、すごくびっくりしたのは袖萩が三味線を弾くところ!
文楽人形は右手と左手を動かしている人が違うので、二人で一つの三味線を弾いているんですよね。すごすぎる!
しかも、本物の三味線の音にちゃんと合ってるし!(三味線の方の手と袖萩の手の動かし方がまったく一緒なんです)

新春ということで、2部が終わったところで手ぬぐい撒きがありました。
太夫さんたちにずいぶんたくさん投げていただいたし、若い咲寿太夫さんなどはかなり遠投されてましたが、私のところまでは飛んでこなかった…。来年はキャッチしたいです。

「本朝廿四孝」は、ずっと前から見たいと思っていて、待望の上演です。
十種香(「じゅっしゅこう」だと思ってたら「じゅしゅこう」と読むんですね~)の段は、失礼ながら途中で眠気に襲われてしまったんですが、肝心の話の筋はちゃんと分かりました。
謙信の戦国武将らしい知略に富んだ面と威厳も印象的だったし。
奥庭狐火の段では、八重垣姫のまっすぐでひたむきな思いが、火の玉のようなパワーで伝わってきます。
「愛しい人を救うためなら、狐に憑かれてでも凍った湖を渡ってみせる!」という強い気持ちが感じられました。
それも、あのイリュージョンのような幻想的な場面があるからこそ。
有り得ないことが起こることで、「愛」の表現がより増幅する気がしました。
文楽「日高川入相花王」
ほんっと~にご無沙汰しております。
もう一つのブログが忙しくて、すっかりサボってたんですが、その合間にも色々と行ってきました(行きすぎで忙しいというのもあります…)。
13日は久々に文楽鑑賞。
幕見で「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」を見てきました。
30分程度の演目なので、たったの500円!お得です(実際、幕見が満員でした)。
お話は有名な安珍清姫の物語なのですが、今回上演されたのは「渡し場の段」で、清姫と船頭のやりとり、安珍への恋しさと疑念によって清姫がついに蛇体と化すところを描いています。
最初の船頭とのやりとりには笑えるところもあるし、後半は実にダイナミックで、清姫の顔は鬼のように恐ろしく変化するわ、川は波立つわ(「ヤマトタケル」の海上の場面みたい)、大蛇となった清姫はその川を泳ぐわ、最後には背景は変わるわ、まさにエンターテインメントです!
しかも、そこには清姫の凄まじい情念があり、人間の心というのはどういうものかと考えさせられたりもします。
ワンコインで見られるのに、内容は盛りだくさんで、視覚的にも分かりやすいので、初心者にもおすすめだと思いました。
太夫さんの語りをじっくりと聞くのも好きだけど、こういうのもやはり楽しくていいですね。
妹背山婦女庭訓(昼の部)
新年以来ひさびさに文楽を観てきました。
楽しみにしていた作品ですので、今回は幕見ではなく、奮発(?)して昼の部を全部見ました。
今回の「妹背山婦女庭訓」は、一応、大化の改新直前の時代をモデルにしていますが、時代考証にも史実にも特にこだわらなかった江戸時代ならではの自由な発想がおもしろく、また、大切なものを守るため、自らを犠牲にしてしまう人々の切ない思いに涙がこぼれました(ただ、この作品を見たら、やっぱり、入鹿=悪人だと思ってしまう人多数になるだろうな~…悪人でも魅力ある悪に描かれてはいますが)。
あと、猿沢の池や春日大社、少し離れて吉野など、この作品は奈良の観光案内的な面もあったのかなーと思いました。
江戸時代に書かれたとはいえ、地元の人間としては非常に嬉しいです。

とくに見たかった「妹山背山の段」にはすごく感動しました。
この上なく美しい舞台面で、哀しく切なく激しい物語が繰り広げられます。
久我之助はまだ若い(十代?)ながら、男気のある立派な若者ですが、その心映えゆえに、頑ななまでにまっすぐ死に向かってしまうところには若さゆえの憐れさを感じました。
彼と恋をした雛鳥は、領地を巡って親同士が争う間柄。
やはり文楽に出てくるお姫様は情熱的ですね。敵の娘でも、募る思いは激しいです。「おまえの女房じゃぞえ」というセリフに泣きそうになってしまった。
川に隔てられ、入鹿の横暴に隔てられ、彼女もまた八重垣姫のように「翼がほしい 羽根がほしい 飛んでゆきたい」と思っていたのでしょう。
そして、久我之助の父・大判事と雛鳥の母・定高(さだか)の、敵対するがゆえの礼節(これはとても日本的だなと感じました)。
敵同士ではあっても共に巨悪に立ち向かおうとする義の心。
お互いがお互いの命を守ろうとしたがゆえの悲劇に胸が締めつけられます。
見終わった後はすごく心が重いのですが(ホントは夜の部も見たかったけど、三笠山御殿のお三輪ちゃんの悲劇も見たら重すぎて食事が摂れなくなりそうなので、昼の部だけで良かったかも)、それでも感動的でした。

P・S 今回は、見ているうちにふっと人形遣いの方の姿が見えなくなり、太夫一人の声が複数の人々の声に聞こえてくるという感覚を味わいました。人形浄瑠璃なのに、生身の登場人物が演じているように見えてくるんです。それだけ入り込んで見てしまっていたのかも。
文楽「新版歌祭文」&天神さん
毎年恒例(といっていいのでしょうか)、松の内の文楽観劇です。
今年は「新版歌祭文」、いわゆる「お染久松」の座摩社の段と野崎村の段を幕見してきました。
まずは座摩社の段。
劇場型詐欺というのが昨今の社会問題になっていますが、ここに出てくる悪だくみは完璧に劇場型詐欺です。
昔からあるんやなあ、こういうこと。
史実の久松がどういう理由で死んだのかは分かりませんが、お話の中で、この詐欺が後にまわり回って身に降りかかってくるという悲劇性を感じました。
けれども、この場面には、詐欺の片棒を担いでいる山伏のコミカルな動きなど笑えるところもたくさんあって面白かったです。
悲劇をいかにも「ド悲劇です」とあらわさず、社会にはいろんな面があることを交えながら描くのが上方らしいなと思います。
つづく野崎村の段は、歌舞伎でも「野崎村」として上演されていますので、ストーリーは知っていますが、お染と久松の心中に至るまでの激しい恋心と恋の哀しみ、おみつの純朴な嫉妬心と、それを乗り越えて身を引く健気な姿に哀れを誘われます。
おみつが出家してまで「死んでほしくない」と思ったにもかかわらず、お染と久松は最後には心中してしまうのですから、よけい悲しいですね…。
また自分の養子である久松とおみつへ父親としての愛を見せる久作の思いの深さにもグッときます。
泣かないでおこうと思っても、やはり文楽は泣いてしまいますね~。

幕見の後、たいていは家に帰るか買い物をするのですが、今回は初詣として、天神さん、つまり大阪天満宮に行ってきました。
文楽劇場はミナミで天神さんはキタですが、地下鉄で4駅。思ったより近いなー。
そして無事到着。
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ここは去年の秋に宝塚で見た「銀二貫」の舞台になっています。
天神祭りでも有名なところですが、周りをビル街に囲まれていて、思ったよりも敷地が小さいんですね(昔はもっと大きかったのかもしれないけど)。
8日に行ったのですが、境内は十日戎の準備で大忙し。
実は天神さんの敷地内にもえべっさんがおられます。
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このお社の前にも大きな鯛の飾りや笹飾りがいっぱいありました。
帰りに天満天神繁盛亭の前にも行ってきました。
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ここで落語を聞いたことはまだありませんが、また近いうちに行きたいなと思っています。