秀山祭三月大歌舞伎
秀山祭

3ヶ月連続の歌舞伎観劇。久々に京都の南座に行ってきました。
今回は「秀山祭三月大歌舞伎」。三代目中村又五郎さん、四代目中村歌昇さん親子の襲名披露公演です。
ちなみに、以前にこのブログでご紹介した八坂神社での奉納舞は、この公演の成功を祈願したものです。
私は昼の部を観劇してきました。

まず最初は、「元禄忠臣蔵」より「御浜御殿綱豊卿」。
この演目は2年位前に松竹座でもあったのですが、その時は見れなかったので、今回楽しみにしていました。
徳川六代将軍の家宣がまだ綱豊という名であった頃を舞台に、四十七士の一人・富森助右衛門との心の交流を描いたもので、最初はあまり盛り上がりのない感じだったのですが、徐々に白熱していく綱豊と助右衛門のやりとりに引き込まれ、感動を覚えました。
また、数年前に御浜御殿(東京にある、現在の浜離宮)に行ったことが幸いして、広大な御殿の臨場感を感じながら見ることができました。
愛之助さんの綱豊は、少し「作り阿呆」のような感じで、はんなりした殿様の雰囲気と、時々垣間見せる「もののふ」としての熱さが印象的。
錦之助さんの助右衛門は、実年齢では愛之助さんよりも年上なのですが、血気にはやる武士らしい若々しさ。はきはきとした台詞がとてもよかったです。
芝雀さんの絵島は、華やかな打ち掛けが似合う美しさに加えて、実務家の御殿女中のキリリとした感じが出ていました。
綱豊の愛妾・お喜世の方を演じる若い壱太郎さんがお兄様方に混じって頑張っています。また、錦之助さんの長男・隼人さんも、やや背が高いながら、愛妾・お古宇として甲斐甲斐しさと可憐な物腰を見せていました。
  
二番目の「猩々」は、とにかく可愛かった!
親孝行な酒売りと、揚子江の中に住む想像上の生き物(もしくは妖精)でお酒が大好きな猩々の踊りですが、まだ若い種之助さんの酒売りはあどけなく(でも台詞はしっかりしていて、いい声です)、歌昇さんの猩々は木目込人形のような愛らしさ。翫雀さんは「猩々のお父さん」という感じでほほえましく(二人の猩々はとくに親子というわけではないとは思うんですが、翫雀さんが歌昇さんのお父さん世代なので、そう見えました)、まるで童話のような可愛らしさでした。
前田剛氏の美術も軽快で、おごそかな松葉目ものにさわやかさをプラスしていたと思います。

おしまいは「熊谷陣屋」。
初代吉右衛門(今の吉右衛門さんの祖父であり養父でもあります)の当たり役である熊谷直実を、こちらも当たり役としている当代の吉右衛門さんが演じます。
昔ながらの歌舞伎らしく、話の展開がかなりゆっくりなので、最初は正直眠気と戦ってしまいました
しかし、忠義のために我が子を手にかけた直実の想像を絶する苦しみや悲しみ、またそれを知った奥方・相模(芝雀さん)の嘆きが胸に迫り、途中から大号泣!
戦のさなかに生まれていなければ、また主君をもつ身に生まれていなければ、決してこんな悲しいことは起こらなかったんだろうな…。
五月に松竹座で見る予定の「寺子屋」もそういった話なので、今から涙腺が心配です。
吉右衛門さんの熱演はもちろんのこと、歌六さん・又五郎さん兄弟の巧さが光り、見ごたえのある舞台でした。
今回は一門の若手がずらりと郎党役で並び、台詞はないながらも、毎日名演を見てとても良い勉強になったのではと思いました。

追記:この場を借りてお知らせです。
来月からカテゴリーに「歌舞伎」を追加し、それ以外の演劇ネタと分離します。
引き続きご愛読いただければ幸いです。
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清盛DAY
昨日は有給消化で神戸へ一日お出かけしていました。
目的は市立博物館の「平清盛展」、そして大河ドラマ「平清盛」の「ドラマ館」と「歴史館」。
名付けて清盛DAYでした(笑)。
何でこんなに清盛めぐりをしたのかは自分でもよく分かりません。
一応、大河は毎週見てて、けっこうおもしろいと思ってはいるんですが、激ハマリってわけでもないのにね。

何となく入ったカフェ(入ってみたら、かなりお洒落だった!さすがは神戸)でのランチの後、まずは市立博物館へ。
今回の展覧会のメインは平家納経。
厳島神社の宝物館では複製品しか見られなかったので、本物を見るのは初めてです。
見た瞬間、思わず息を呑むほどの美しさこんなに綺麗な巻物、見たことがありません!
一見の価値ありだと思うので、興味のある方はぜひ見に行ってくださいね。
その他、いろいろあるのですが、平家のことが出ている文献も面白いです(しかも陽明文庫所蔵の文書だったりする!)。

そして、地下鉄中央市場前駅からすぐの「歴史館」へ。
こちらは、福原京の遺跡を中心にした施設です。
あまり大きくないので、そんなに見るところはないのですが、「清盛武将隊」の面々が日替わりで接客したり、時には演舞も披露するそうなので、そちらのほうが楽しいと思います(笑)。

「歴史館」の後は、駅ひとつ戻ってハーバーランドの「ドラマ館」へ。
こちらには、清盛役の松山ケンイチさんの等身大の人形があって、一緒に写真を撮ることができます。
マツケン人形
ものすごくリアルで、ちょっとびっくりしてしまいました
そして、もともと背が高いうえに、高下駄を履いているので、細身なんだけど、かなり大きいなと思いました。
これ以外にも、ドラマで使われた衣装や小道具も色々展示してありました。
テレビの画面では質感まで分からないので、間近で見て「ああ、これって麻なんだ!」と思ったり、なかなか面白いです。
まだパネル展示だけで何も置かれていない部屋もあり、たぶん、これから撮影が進んだらまた展示すると思われるので、また立ち寄れたら寄りたいなと思います。
こちらにも武将隊のメンバーが来ています。
昨日は清盛さんが「いらっしゃいませ」と丁寧にご挨拶されてました(笑)。

時間があればハーバーランドをウロウロしたかったのですが、もう夕方だったので梅田まで戻り、夜は友達とルクアのモクモクファームのレストランでお食事
友達もちょっと前にドラマ館と歴史館に行ったので、「ここはこういう展示やったやろ?」という話や、大河ドラマの話もできて楽しかったです。
日はまた昇る
オレンジ

東日本大震災から1年が経ちました。
1年前、何もできない私だけど、せめてこのブログを見てくださる方の心の癒しになれば…と色見本を載せました。
今日はオレンジ色を載せます。
物理的にもメンタル的にも、現状はまだまだすごく厳しいのですが、必ず日はまた昇ると信じて…。
ヤマトタケル!
発表時に話題を呼んだ、亀治郎さんの猿之助襲名・香川照之さんの中車襲名・政明くん(團子)の初舞台の内容が明らかになりました。
6月は夜の部、7月は昼の部で「ヤマトタケル」!猿之助さんのタケル、中車さんの帝、タケヒコは右近さん。
大好きなお芝居なので嬉しいです(東京までは見に行けないけど)。
やはりというかなんというか、中車さんの出演される演目は新歌舞伎(明治以降の作品)になりましたね。
義太夫狂言や舞踊は、また勉強してからのお楽しみですね。
個人的には、松葉目物の「棒しばり」とか「身替座禅」も見たいな。
新・猿之助さんの「義経千本桜」川連法眼館(6月)も楽しみ!狐忠信いいなあ~、見たいなー!
そして、猿之助さん改め猿翁さんが「楼門五三桐」の真柴久吉で復帰!
体調が気になりますが、大丈夫なのかな?

P・S 段四郎さんもしばらく休演が続いていましたが、4月(あ、すみません、6月と書き間違えていたので訂正します)に復帰のようでよかったです。
行ってよかった!二月花形歌舞伎
先月の話になってしまいますが、2月26日に松竹座で「二月花形歌舞伎」昼の部を見てきました。
1月も松竹座に行ったし、3月は南座だし…ということで、最初は見に行かないつもりだったのですが、風の噂で伝え聞いたところ、あまりにも楽しそうだったので、ついついチケットを買ってしまいました。
2月は短いうえに、今年は三連休じゃなかったり、旅行に行ったりで、私の予定があいていた日が26日のみ。なんと千秋楽です!ほんと、間に合ってよかった&チケットがあってよかった。

まずは、「慶安の狼」。
由比正雪事件を背景に、時代の移り変わりに翻弄された若者・丸橋忠弥とその幼なじみ野中小弥太の悲劇を描いたものです。  
元は新国劇の演目だったので、台詞は現代調。
悲劇と喜劇でジャンルは違いますが、去年の9月に見た「人情噺文七元結」のような形での上演でした。
私は、この次の「大當り伏見の富くじ」を観劇のメインに設定していたのですが、この「慶安の狼」も、思っていたよりずっと良くて、すごく感動しました。
忠弥を演じた獅童さんは、精悍な持ち味が役にぴったりで、最後の立ち回りの鬼の形相にぞくっとするような凄みがありました。
忠弥は正雪一味に加担して国家転覆を狙った悪党ではありますが、戦国の世から徳川幕府の世へと社会が変化していったゆえにそうならざるを得なかったところがあり、その苦しみや葛藤がよく伝わってきました。
小弥太の愛之助さんは、セリフ回しに「蝉しぐれ」の文四郎を思い出させるところがあり、友を思う若い武士の優しさや、世の中のためにその友を訴える正義感を熱く演じ、後に藩に裏切られる彼の悲劇性をいっそう高めていたと思います。
国家転覆を企む正雪は染五郎さん。どんなに有能でも結束を乱す者や役に立たなくなった者は容赦なく切り捨てる、冷徹な理論家を演じて新境地を開いたと思います。
そして、冷徹な人間ではありますが、やはりそのカリスマ性に忠弥たちは惹きつけられたんだろうな~と納得できる存在感がありました。
ベテラン勢も大活躍。
正雪の部下を演じた友右衛門さんは、お正月の国立劇場のテレビ中継「三人吉左」を見て、ぜひとも一度じかに演技を見てみたいと思っていたのですが、あたりを払うような存在感と眼ヂカラが際立っていて、さすがと思わせるものがありました(今回、父・雀右衛門さんを亡くされて間もなかったのですが、却って「芝居を頑張っていこう」という気迫のようなものが感じられました)。
家老を演じた歌六さんもさすがの上手さ。緩急自在だし、間合いが最高。
今回のお芝居は流れるようにスピーディーに進むので、大向こうから声がかかるタイミングがあまりなかったのですが、暗転の際に「歌六!」とかけ声がかかってました(なぜか「播磨屋」ではなくて名前だった(笑))。
余談ですが、又五郎さんのお兄さんなので、顔立ちがやはりどこか似ていますね。
そしてやっぱり、竹三郎さん!頑固者の忠弥の母を演じていたのですが、御年80歳とはとても思えない声の張り。口うるさいけど誇り高い武家の女そのものでした。ほんと感心するわー。
ほか、忠弥の妻役・高麗蔵さんの気品ある美しさ、酒場の小女を演じた雁洋さんのいかにも若い娘らしい身のこなしが印象に残りました。

そして、「大當り伏見の富くじ」。
「えっ?これって歌舞伎?」と思うような笑いとスピード感の中にも、歌舞伎らしいはんなりとした風情や情の細やかさがきちんとあり、「歌舞伎らしくないかと思えば歌舞伎らしい、歌舞伎らしいかと思えば歌舞伎らしくない」というような、両方の面白さを感じられる作品でした。
そして何より、この企画を立ち上げた染五郎さんの「歌舞伎は過去の名作を演じているだけではなく、今現在もちゃんと生きて呼吸しているんだよ」というメッセージが感じられました。
ところどころに、「高杯」や「傾城反魂香」などを思わせるものがあったり、「忠臣蔵」「切られ与三郎」の台詞や「封印切」の動きなどをマネしてみたりというパロディがありましたが、このパロディも下品ではなく、歌舞伎に敬意を表している感があります。
そして、現代調の笑いの数々。河童(雁祥さん。「川のもんはワイのもん!」と言う口調がかわいい)と水中でバトルをしたり、千壽郎さん扮する小春という犬(狆)が出てきたり(この小春ちゃん、めっちゃ可愛いです!)、吉本新喜劇の「ローテーショントーク」や「ミュージカルトーク」を取り入れてみたり(ミュージカルトークをやって「ハモってへんがな!」とつっこまれてました。)、もう、すっごくおかしい!でも、すべてが何だか可愛らしいんですよ。
このままでもじゅうぶん面白いんですが、(明治時代にできた原作はあるものの)まだ生まれたばかりの作品ですので、これから各地で上演されて、笑いの部分が洗練されてくるとなお良くなると思います。
何演目か後に「あの『伏見の富くじ』が大阪に帰ってくる!」という告知があれば、ぜひまた見に行きたい作品です。
元は大きな質屋の跡取り息子ですが、今は落ちぶれて紙屑屋をしている主人公・幸次郎は染五郎さん。
一時は真剣に上方留学まで考えたという染五郎さんだけあって、東京出身ながら上方の空気をよく分かっている演技で(どうしてもイントネーションが違ってしまうところは、周りから「あんたお江戸の人やろ!」というツッコミが入りますが、それも確信犯的で面白いです。)、元アホ坊ん(?)らしいボケボケっぷりや、恋する青年の可愛らしさがはんなりと漂っていました。
幸次郎が恋する鳰照太夫は翫雀さん。ぽっちゃりと愛らしく、愛嬌のある太夫さん。
顔見世の「お江戸みやげ」のおゆうさんに引き続き、ユーモアとペーソスを感じさせる演技がすばらしく、「喜劇作品の女形」を確立しつつあるという感じでした。
近江水島藩の家老・黒住平馬の獅童さん。とにかく、めちゃめちゃおかしかった!!思い出しただけでも笑い死にしそう~。
幸次郎の妹・お絹(壱太郎さん)を側女にしようとしていて、口をゆがめて甘ったるい声で話しかけるところや、去り際にカツラを前にずらして「カブトムシ!」と叫んだところが特にツボでした(実はハゲているという設定で、ちょんまげのカツラの下にバーコードのカツラをかぶっています)。
お絹の壱太郎さんはホントに可愛い!いつものことながら「この人はホントに男の子なんだろうか」と思ってしまいます(笑)。
顔見世(昼の部)では座っている場面が多かったんですが、今回は甲斐甲斐しく働く若い娘で、生き生きとしたキュートな魅力を振りまいてました。
平馬に言い寄られて、あの甲高い声で「嫌~!ほんまに嫌~!!!」と叫びながら逃げ回っていたのですが、「ほんまに」というのがリアルで笑った。
幸次郎が元々ぼんぼんだったので、友達二人も白塗りのぼんぼんです。
「よっしゃん」こと芳吉の亀鶴さんは、のっけから「獅童はんの丸橋忠弥、よかったわー」と登場(笑)。自由自在な雰囲気が楽しく、見ているだけで引き込まれてしまいます。
伏見稲荷で盗み聞きをしているところで、平馬に「いや、(そこにいるのは)ゾウかもしれません」とムチャぶり(?)をされ、慌てふためいて、とっさに「ぞーう!!」と叫んだところにバカウケ!(あとで「ゾウはパオーンやろ」と言われてました。)
もう一人の友達、喜助の松也さんは自在な亀鶴さんにくっついてよく頑張ってました。キツネの鳴きまねも可愛かった。お兄様方から色々と芸を吸収した感があるので、また次の舞台も期待しています。
太夫の千鳥を演じた宗之助さんは、きれいな女形さんですが、今回は一瞬にして男の声で話したり、とてもコミカルで芸達者。
そういえば、太夫さんはみんなお歯黒をつけてましたが、思ったほど違和感がないですね。
鳰照太夫付きの新造・雛江は、大阪初お目見えの米吉さん(なんとまだ18歳!)。なんて可愛いのでしょう!まるで生きているお人形さんです。清楚な雰囲気で、これからが楽しみな人です。
あと、禿(かむろ)を演じた吉太朗くんのまろやかなセリフ回しに大器の片鱗を感じました。こちらは千秋楽に11歳になったばかり。若いというより子供なのですが、この年齢でここまでできるのはすごいですね。
今回の影の功労者ともいえるのは、狆の小春ちゃん!千壽郎さんは女形なのですが、小春ちゃんも女の子の犬で、まるでワンレンのお姉さんのように長い耳を手(前脚?)でなでつけたりして面白かった。上村吉弥さんのブログにアップの写真があるので、興味のある方は探してみてください。
千壽郎さんはもう一役、伏見稲荷のコミカルな神主も演じていて、まさに今、伸び盛りという感じですね。
そういえば、お供え物のあげさん(油揚)は作り物なのでカチカチでした(笑)。一瞬、ダンボールが出てきたのかと思った。
この作品でも、超ベテランの竹三郎さんが大活躍。欲深な遣手の婆さんで、なぜか「家政婦のミタ」の帽子まで持ってました(笑)(しかも、カツラの上にかぶるから、「かぶってる」というより「乗せてる」って感じで、思わず吹き出してしまいました)。
歌六さんも大活躍。旅の絵師の役なのですが、謎解きをするところでは、いきなり古畑任三郎に!(笑)
全体的な雰囲気やセリフ回しにやわらか味があり、登場人物たちをを温かく見守る包容力を感じました。
愛之助さんは、この作品では支える側に回り、最終的に幸次郎たちを救う金持ちの侠客・信濃屋伝七を演じてました。ちょっと荒っぽいドスの利いたセリフ回しがかっこよかった!のですが、手に小春ちゃん型のぬいぐるみをはめて犬を抱っこしているフリ(丸分かりなので、みんな笑ってました)をしていて、そのギャップがたまらなくおかしかったです。

かなり長く書きましたが、出演者全員がパワーを集結して一生懸命に表現する、その熱さに「歌舞伎の新しい瞬間に立ち会えた!」という喜びを感じ、とても感慨深かったです。

P・S 今回、座頭(主役)をつとめた染五郎さん・獅童さん・愛之助さん、そして、亀鶴さん・宗之助さん・薪車さん、なんとみんな39歳の同学年!
歌舞伎界で、しかもひとつの演目で、これだけたくさんの同級生がいるというのはすごいですね(ちなみに、私と同学年の人は少ないんだなぁ…)。