中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演
文楽を見た翌日は歌舞伎でした(このタイミングでしか見に行けなくてねぇ…。そしてまた疲労する)。
京都のロームシアターで「中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演」を観てきました。
久々の歌舞伎、楽しかった~。
ロームシアターは始めて行きましたが、外観は古いものの(けど、それがいい味を出している)、内装は大幅に改装されたらしく、きれいでトイレも多くて便利。
ただ、客席は飲食禁止なのに、ロビーには飲食できるような椅子等がほとんどなくて、物を置くところもないような場所で立って食べなければいけないのは不便ですね。

それでは、プログラムの順に紹介していきます。
まず最初は「歌舞伎塾」。
これは初の試みで、歌舞伎俳優の楽屋での準備の様子、立役・女形が出来上がるまでを舞台の上で見せ(分かりやすいようにスクリーンに映したりもします)、そこに歌舞伎の囃子方さんと若手役者さん、お客さんの有志による舞台での効果音の実演や勘九郎さん・七之助さんのトークや質問コーナーも盛り込んだもの。
トークと質問は例年「芸談」というコーナーで行っていたのですが、時間が短くて、なかなか質問に答えられなかったり、お客さんと触れ合えなかったりするのが残念ということで、準備の様子を見せながら、時間を多く取って行うことにしたそうです。
今年は南座の工事で歌舞伎鑑賞教室がなかったので、ここでこういった演目を見られてよかったな。
楽屋入りから本番の踊りまでの様子を見せるのは中村屋一門のいてうさん(そのまま「いてう」と読まずに「いちょう」と読みます)と鶴松さん。
ひげを剃ったり、びんつけ油で眉毛を消したりというところから、化粧をしたり衣装をつけたりするところまで(衣装部さんや手伝う他の役者さんも出てきます)、勘九郎さん・七之助さん、そして、司会を務める澤村國久さん(勘九郎さん・七之助さんの伯父である澤村藤十郎さんのご一門ですね)の楽しいトークを交えながら進んでいきます。
國久さんの話しかたは、ハキハキしたところやどこか愛嬌があるところなどが澤瀉屋の市川猿四郎さんに似ている気がします。
途中から中村屋最年長の小三郎さんも参加して、テンション高く(笑)、若々しく、見得の説明などをされていました。
また質問コーナーも行われ、先日行われた叔父の芝翫さん襲名披露公演で行われた口上でのこしらえについて(女形が多い七之助さんも立役で出ていたけれど、口上の時に立役と女形、どちらの姿で出るかはどうやって決めるのか?)や、嵐ファンでもある方から、嵐のライブの松本潤さんのソロの場面で使用された、亡き勘三郎さんをはじめとする中村屋一家の映像についての質問がありました。
まず、口上については、女形の姿での口上は六代目歌右衛門さんが考案したものだというお話が。
それまでは女形も口上の時は立役のこしらえで出ていたそうで、現在は、真女形(女形専門の役者)が立役の鬘で出るのはちょっと恥ずかしい…と思う場合に女形のこしらえで出演されるそうです。
もう一つ、口上について、中村屋と成田屋で60年に一度だけ行う口上があるとのこと。
そして、その60年に一度がもうすぐ来るそうです。(わーい!)
ちなみに、なぜ中村屋と成田屋かというと、江戸時代、中村屋は座頭(劇場主)、成田屋は看板役者だったからだそうです。
元々は二人で口上を行ったそうですが、勘九郎さんから「私たち(兄弟)は二人で一つですので、海老蔵さんと三人で」との言葉が。
とても弟思いで優しい勘九郎さんに思わず感動してしまいました。
また、嵐の松本さんのエピソードも感動的。
勘三郎さんだけではなく、蜷川幸雄さんなど、お世話になった方々の映像も出てきて、ライブ会場は涙・涙だったそうです。
もちろん、映像の使用にあたって勘九郎さん・七之助さんへの事前報告があり、松本さんが亡き勘三郎さんを今でも慕い、思い出してくれることにとても感謝しているとのことでした。
そして、いてうさんと鶴松さんの拵えが出来上がったところで、「草摺引」の踊りへ(その前に衣装や化粧についても色々と解説があり、分かりやすかったです)。
舞鶴を演じる鶴松さん、立派になったな~!
あの小さかった子役さんがこんなに素敵な女形の姿を披露してくれて感無量でした。
役としても、女武者のキリリとした風情にあふれていて良かったです。
いてうさんの曾我五郎は、持ち味である闊達さが生かされ、踊りもきびきびとしていて、スカッとした雰囲気があります。
そしてやっぱり、師匠の勘三郎さんの踊りを思わせるようなところがあって、ちょっと鼻の奥がツンとなってしまったなぁ…。

二部と三部は七之助さん、次いで勘九郎さんの踊り。
七之助さんは「汐汲」、勘九郎さんは「女伊達」をそれぞれ披露。
「汐汲」は、玉三郎さんと七之助さんが踊った「二人汐汲」は見たことがありますが、単独なのは初めて。
改めて、こういう踊りだったのかと認識しました。
一人で踊ると、切なさや思いを込めた踊りだというのがよりよく分かりますね。
後半は三段の傘を使った華やかな踊り。
愛した人をしのぶ海女の心情を踊る舞踊がこういう華やかな形に変化していくのも、歌舞伎舞踊の醍醐味だなと思いました。
「女伊達」は、江戸の吉原の桜の頃を背景にした、華やかで楽しい、大好きな舞踊です。
松竹座で片岡孝太郎さんたちが踊ったのを観ましたが、またちょっと雰囲気が違うようにも感じました。
勘九郎さんの女形が色っぽくてオドロキ!
立っているだけでも女の感じが出ていると思います。
男たちにふっかけられた喧嘩をあしらう振りがお洒落で楽しく、もっと見たいと思ったくらいでした。。
「草摺引」も含めて三曲とも歌舞伎初心者の方でも分かりやすく、なおかつじっくりと見ることができる演目で、なかなかよかったです。
それと、今年は関西の歌舞伎の興業が少なくて淋しかったので、この公演があって嬉しかったです。
来年以降、もっと歌舞伎をやってほしいな~。
来月は先斗町歌舞練場での顔見世を観に行きますが、南座の耐震工事も無事に終わってほしいですね。
スポンサーサイト
文楽「日高川入相花王」
ほんっと~にご無沙汰しております。
もう一つのブログが忙しくて、すっかりサボってたんですが、その合間にも色々と行ってきました(行きすぎで忙しいというのもあります…)。
13日は久々に文楽鑑賞。
幕見で「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」を見てきました。
30分程度の演目なので、たったの500円!お得です(実際、幕見が満員でした)。
お話は有名な安珍清姫の物語なのですが、今回上演されたのは「渡し場の段」で、清姫と船頭のやりとり、安珍への恋しさと疑念によって清姫がついに蛇体と化すところを描いています。
最初の船頭とのやりとりには笑えるところもあるし、後半は実にダイナミックで、清姫の顔は鬼のように恐ろしく変化するわ、川は波立つわ(「ヤマトタケル」の海上の場面みたい)、大蛇となった清姫はその川を泳ぐわ、最後には背景は変わるわ、まさにエンターテインメントです!
しかも、そこには清姫の凄まじい情念があり、人間の心というのはどういうものかと考えさせられたりもします。
ワンコインで見られるのに、内容は盛りだくさんで、視覚的にも分かりやすいので、初心者にもおすすめだと思いました。
太夫さんの語りをじっくりと聞くのも好きだけど、こういうのもやはり楽しくていいですね。
痛快!「スカーレット・ピンパーネル」
季節の変わり目ですぐ疲れてしまうため、なかなか感想が書けなかったのですが、梅田芸術劇場で「スカーレット・ピンパーネル」を見てきました。
宝塚版ともブロードウェイ版とも違う東宝バージョンということで(ブロードウェイ版は見たことないけど、パーシーではなくマルグリットが主役で上演時間も少し短いんだよね、たしか)、同じフランク・ワイルドホーンさんの曲を使いながらも、違う歌詞(歌のタイトルも違う)、違う演出で、「こういうふうにも上演できるんだ」という発見がありました。
話の内容は、宝塚版でのダイナミックな王太子(ルイ17世)救出作戦は使われず、その代わりにパーシー、マルグリット、そしてショーヴランの心理的なかけひきをじっくりと描き、マルグリットが「スカーレット・ピンパーネル」と会話するというシーンまであってドッキドキでした。
また、パーシーの友人とその恋人のロマンスの場面はなく(アンドリューもいなかったし、その恋人のシュザンヌは名前のみの登場でした)、パーシーと仲間の友情をクローズアップして描いていたと思います。
アジトでパーシーに「ここから先は危険なのでみんなは帰った方がいい」と説得され、泣きそうになっている仲間の顔に、こちらも思わずもらい泣きしそうになりました(結局みんなパーシーと一緒に行動したけどね)。
ラストはほぼ宝塚版と同じ。
あえてシリアスな感じにせず、こういう終わり方にするのが痛快でオシャレで面白いですね。

パーシー・ブレイクニー卿の石丸幹二さん。
「スカピン」は宝塚で初演された後、男女のキャストではなかなか上演されず、「パーシーは歌もたくさんあるし、演技的にも別人に成りすましたりと大変なので、キャスティングで難航しているのかな~」と思っていたのですが、華も実力もある石丸さんは願ったり叶ったりの配役!見る前からとても楽しみにしていました。
はしゃぐふりをするところなどは早口になってしまった感がありますが、台詞がないところでも目線の使い方などでパーシーの心の内や信念を表していたと思います。
歌声は朗々と響くところはもちろん、繊細な感情を表すところも上手だなと思いました。
安蘭けいさんのマルグリット。
華やかで気が強く、コメディ・フランセーズの主演女優の貫録十分。
イギリスの貴族で富豪であるパーシーと結婚することで自分の立場の曖昧さに悩む(「フランスが革命の行きすぎで混乱している時期に、元革命の闘士である自分はお気楽な金持ちの夫人として生きていいのか…」という痛いところをショーヴランが突いてきてしまった…と感じているような)姿や、急に態度を変えてしまったパーシーへの戸惑いと、まだ捨てきれない愛をじっくりと見せてくれたと思います。
そしてクライマックスには二刀流で戦う(笑)。何といっても日本初演のパーシーはこの人ですからね(笑)。
また、葛藤しながら歌う「悲惨な世界のために」は、かつてパーシー役で歌った「ひとかけらの勇気」(同じメロディです)を思い出してウルウルしてしまいました。
石井一孝さんのショーヴラン。
石井さんを見るのは超久しぶりなんですが(以前見たのは「出島」で「長崎は今日も雨だった」を英語で熱唱していた姿ですから(笑)、もう10年以上になるのではないでしょうか)、いい感じに渋くなり、それでいて、貧乏から這い上がった青年のままのショーヴランの心も表現できていたと思います。
しかしながら、ショーヴランは無意識のうちにロベスピエールや自分たちの敷いた体制が危うくなっていることも感じていたのではないでしょうか。
だからこそ、自分が正しいと信じているものを、マルグリットにも正しいと思い続けていてほしかったのではないかと、終演後に思いました。
素晴らしかったのはロベスピエールとプリンス・オブ・ウエールズの二役を演じた佐藤隆紀さん。
東宝ミュージカル初演にあたって、新たにロベスピエールの歌が加わったのですが、これが実に上手い。さすがです!
あの一曲があるだけで、ロベスピエールのイメージが変わりますね(もし、来年上演される宝塚版の再々演でもこの歌を使うとしたら、かいちゃん(七海ひろきさん)、ぜひぜひ頑張って~!)。
普段はヴォーカルグループとして活躍しているので、他の人と一緒に歌うところでは、相手の声と自分の声を共に美しく響かせることができていて、そこも素晴らしいなと思いました。
また、早替わりもあります。
演技を変えるだけではなく歌声まで一瞬にして変えていて、客席からどよめきが起こったほどでした。
パーシーの仲間であるピンパーネルのメンバーは皆、等身大の青年役を懸命に演じています。
オジーの駒木根隆介さんは歌舞伎でいうなら市川猿弥さんという感じで(笑)、コミカルで元気いっぱいでとても楽しかった。
デュ―ハーストの上口耕平さんは最初の出だけでもパーシーの親友であることをはっきり感じさせてくれて嬉しい収穫でした(あと、3階席から見るとちょっと要潤さんに似てるかも~)。
ピンパーネルであることを隠すため、孔雀のようなハデハデなファッションに身を包み(パーシーは孔雀そのまんまでした(笑))、お気楽な若者を演じるところでは、「ニシキゴイ!」と言いつつポーズをとるのが面白かった(笑)。さてさて、宝塚版ではどんな格好になるのでしょうか(前回と前々回、パーシーはシマウマ柄の衣装でした(笑)。そのままいくのかそうじゃないのか、楽しみだ~(笑))。
則松亜海ちゃん(宝塚時代の、夢華あみちゃんと呼ぶ方がなじみがあるなー)のマリーはアルマンの恋人ではなく、芸術家で、コメディ・フランセーズのスタッフであるタッソーの恋人でした。
あみちゃんはすっきりした雰囲気が役に合っていたと思います。ラストシーンでタッソーと結婚したのでマダム・タッソー(ロンドンにある蝋人形館を作った人)になるというのは笑ったな。

今回の終演後には、佐藤さんと、彼の所属する「LE VELVETS」メンバーによるトークショーが行われました。
二度くらいテレビで見たような気はしますが、生歌は初めて。やっぱりさすがですねー。
トークは、最初は皆さん緊張気味のようでしたが、見ながらつい登場人物に感情移入してしまう…という話や、佐藤さんのお稽古場の裏話などをするうちにだんだんほぐれてきて、もっといろいろなお話を聞きたかったな~と思いました。