壽初春大歌舞伎
今年の初歌舞伎は、松竹座の新春公演です。
櫓
今年はこのように櫓(やぐら)も出ていて、また、お正月公演らしく着物姿のお客さんも多くて(私も着物で行ってきました)華やかな雰囲気でした。

まずは「傾城反魂香」。
吃音に苦しむ絵師・又平とその妻おとくの夫婦愛の物語ですが、幕開きはいきなり「絵に描いた虎が絵を抜け出した」という荒唐無稽なもの。
実は、近年上演されているのは、長ーいお話の一部分。虎の話は前の場面からの続きです。
それでも、本当に上手な絵師が描いた絵は奇跡を起こすという伏線になっています。
翫雀さんの又平は吃音の表現がリアルでびっくり。他人から理解されない哀しみが胸を打ちます。
秀太郎さんのおとくは優しくてしっかり者だけど、どこか可愛い女性でした。
珍しく立役(それでも前髪立ちの青年だけど)の笑也さんも素敵。
海老蔵さんはセリフがこもるのが少し気になりますが、押し出しが立派です。
市蔵さんの土佐将監は、きびしさが却って師匠の愛のムチに見える滋味のある演技。その奥方を演じた家橘さんも暖かみがあります。
又平が石の手水鉢に描いた絵が反対側の面にまで透けて見える仕掛けはどうなっているのでしょう。うまいこと作ってあるなーと感心しました。

「修善寺物語」は、近代歌舞伎の名作で、一度見たいと思っていたもの。
なるほど、名作といわれるだけあって、実によくできたお芝居です。
伊豆の面作師・夜叉王(我當さん)は、娘・桂(扇雀さん)のことを「母親に似て気位が高い」と言い、妹娘の楓(吉弥さん)のほうが職人気質で自分に似ていると言っていたのですが、ひとつのことに対しての執念ともいえる一途さはまるでそっくりで、この親子って実は似てるやん!と思いました。
結末は芥川龍之介の「地獄変」のような印象。芸術家ってみんなこんな感じなんでしょうか?
話の内容にも「近代」を感じたんですが、衣装にも江戸時代にできた歌舞伎との違いを感じました。
古い作品だと、どんな時代の話でも江戸時代の衣装だったりするのですが(そのほうがどんなキャラか分かりやすかったし、共感もできたんでしょうね)、この作品では時代(鎌倉時代)に合った衣装で、明治時代はきっとそれも画期的だったんだろうなと思います。

「積恋雪関戸」は、かなり長い舞踊なのですが、実はこれもお話の一部分(全部やるとどんだけ長いんだろうね)。ちょうどクライマックスの場面です。
話の前後が分からないと難しい部分もありますが、雪の中に桜が咲くという、現実ではごく稀にしか見ることのできない景色の美しさ、登場人物の衣装の豪華さなど、目で楽しめるところがたくさんあり、そこにストーリーもあるのでなかなか楽しかったです。
そして、団十郎さん・藤十郎さんという名優お二人の芸の素晴らしさを堪能できました。
とくに二役を演じた藤十郎さん、あでやかで妖しいだけではなく、パワーやオーラをすごく感じました。

三演目とも登場人物の少ない作品で、お弟子さんたちは黒衣などでの出演が主だったので少し寂しかったんですが、夜の部の「雷神不動北山櫻」ではかなりたくさんの人たちが出演されているようです。
夜の部も見たかったのですが、この作品はまたの機会の楽しみに取っておきたいと思います。
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