九月大歌舞伎 昼の部
待ちに待った六代目勘九郎さんの大阪襲名披露公演!
9日に昼の部を見ることができました。

11時開演なので、10時半くらいに松竹座の前に着いたら、ネット予約のチケット発券機の前に長蛇の列が。
「えらい混んでるな~」と思いきや、なんと発券機がダウンしてしまったそうです(チケットWEB松竹自体もダウンしていたそうです)。
取り急ぎ、機械の前のスペースで松竹の方に名前や予約番号を一人ずつ確認してもらい、手書きの引換券で入場しました。
後ろの席で見ることがほとんどなので、どの劇場でも、いつも30分前くらいには着くようにしているのですが、やっぱり早めに行くに越したことはないのねー。

さて、歌舞伎です。
最初は「妹背山婦女庭訓」より「三笠山御殿」。
ストーリーはどうしても「求女!あんたが二股かけるからや!」と言いたくなってしまうのですが(橘姫の壱太郎さんもツイッターで「求女はひどい男だ」とつぶやいてました(笑))、まあ、さすがは藤原不比等をモデルにしただけあるともいえます。
ちなみに、求女を演じる新悟さんは、ちょっと細すぎなくらいスリムですが、スラリと背が高く素敵でした。見た目は策士を感じさせない綺麗な色男であるという点が、「そうそう、女性はこういうのにだまされちゃうのよね」と納得できる感じ(笑)。
壱太郎さんの橘姫はおしとやかなお姫様ですが、一心に求女を愛する健気さの中に、激しい恋の情念が仄見えます。
最近、壱太郎さんに「芝居を掘り下げる心」を強く感じるのですが、それがいい具合に出ていますね。
そして、主人公のお三輪は七之助さん。
おきゃんで健康的で可愛い田舎の女の子が、嫉妬と屈辱と怒りでああなってしまうのか…と、思わず身震いしてしまいました。
嫉妬に狂ったお三輪の表情は「疑着の相」というらしいですが、本当に、怖いくらいすごい表情!
この迫力は、女形が多いものの、立役もできる七之助さんの強味ですね。
それに、こういうのはこれから先も役に立ちそうですね(たとえば「紅葉狩」とか)。
三笠山御殿の名物(?)「いじめの官女」は、みんなコワーイ!でもどこか滑稽で、ちょっと笑ってしまいます。
特に當十郎さん!ほんまエエ味出してはるわ~。大阪の舞台には、やっぱりこの人がいないとね!
鱶七の橋之助さんは、唐突に出てきて、しかも出番が短いために印象に残りにくいという、不利な点はありますが、得意の荒事で、人物の大きさを感じさせるお芝居でした。

重厚なお芝居から打って変わって、お次は軽快な「俄獅子」。
「お祭り」もですが、こういう浮き立つような雰囲気、好きですねー。
鳶頭の橋之助さんはとても爽やか!首抜の衣装がよく似合っていて粋な男ぶりです。
芸者の扇雀さんは、お母さんの扇千景さんにそっくり…と思ってしまいましたが(笑)、コミカルな振りもすっきりと、おしゃれに見せていたと思います。
この鳶と芸者は婀娜っぽい間柄ではあるのですが、このお二人のコンビだと爽やかでスカッとした雰囲気。
頬と頬を近づけるところには微笑ましさがありました(もちろん大向こうからは「ご両人!」のかけ声が)。
橋之助さんの後見をつとめていたのはお弟子さんの橋吾さん。最近、橋吾さんのブログを読み始めたので、見てすぐに顔が分かるのがちょっと嬉しかったです(笑)。
続いて「団子売」。
歌舞伎ファンになりたての頃、「勘太郎(当時)がやる女形は、女房が特にいい」と聞いたことがあり、その「女房」は「団子売」でのお福のことでしたので、今回見るのをとても楽しみにしていました。
お福ちゃんは挙措にいちいちハートマークが出そうなくらい(笑)「杵造さんLOVE」な可愛い女房。
お餅(搗く前だから蒸した糯米か?)を臼に移す仕草も可愛く、しっとりしていて、客席からほわーっとした笑いが起こっていました。
七之助さんの杵造は餅を搗く仕草が快活で、見ているこちらまで楽しく餅搗きしている気分になりました。
踊りの前に、お二人の口上があったのですが、お父さんの勘三郎さんが闘病中で出演できないことを、本人も大変申し訳なく思っているとのこと。
息子さんの晴れの舞台で、親としては出来映えも気になるだろうし、一緒に出られないつらさはあるかと思いますが、勘三郎さんも二度にわたる病でお疲れのことと思いますので、今は回復に専念され、ぜひまたの機会に、大きく飛躍しつつある息子さん二人と、パワーアップした勘三郎さんとの共演を見てみたいなと思いました。
口上でもう一つ。本人としての口上が終わり、役の気持ちになって「杵造さん」「お福」と呼び合うお二人の語尾にも、明らかにハートマークがついていたと思います(笑)。

昼の部の切は「瞼の母」。
昔からぜひ見たいと思っていたお芝居です。
忠太郎って、もっと若いのかと思っていたら三十代だったんですね(そこかよ!)。
でも、うら若い青年でないことが却って「まだ見ぬ母を慕う気持ちは何歳でも変わらないんだな」と感じさせて、よけいに涙を誘います。
ラストシーンで、母と妹が自分を追いかけてきたことを知りながら「会うもんか、会ってやるもんか」と強がる忠太郎の姿に、私事ながら、幼い頃に実の両親と生き別れた祖父の境遇に思いを馳せてしまいました。
忠太郎のように名前も知らないとか、別れてから一度も会っていないということはなかったのですが、祖父は私たち孫がいる年齢になっても、「母親に捨てられた」という気持ちを捨て去ることができなかったようです。
曾祖母も祖父に対しては遠慮があり、祖父が建てた私たちの家に泊まったことは一度もなく、ごく稀に訪ねてきても、近くにある実家に泊まっていました。
私も、曾祖母と会って話した記憶はたった一度しかありません。
でも、頑ななまでによそよそしかった二人の心の奥にも、おはまや忠太郎と同じ気持ちが流れていたように思えて仕方がないのです。
曾祖母は祖父に他人行儀にされても 祖父が幸せに暮らしている姿を見たくて訪ねてきてくれたのでしょうし、祖父も「母親だと認めてやるもんか」と思いながらも来ることを拒まなかったのは、やはり母親に会いたかったのだろうし、血を分けた孫や曾孫の顔を見せてやりたかったのだろうと思います(今思えば、私が曾祖母に会ったのは弟が生まれたばかりの頃のような気がします)。
ちょっと話が横道にそれましたが、勘九郎さんはセリフ回しが勘三郎さんそっくり!
新歌舞伎なので言い回しなどは厳密に決まっていないと思うのですが、いつも近くで見ていると(ましてや親子だと)似てくるのかもしれません。
やくざ稼業でありながら、弟分からの信頼も厚く、腕も立つけれど、自分の母親くらいの年の女性を見ると、ついつい瞼に浮かぶ母親の姿を重ねてしまう、情にもろい忠太郎が切なく、何度も涙してしまいました。
とくに半次郎の母・おむらに手を取られて文字を書くシーンは、勘九郎さんの目もだんだんウルウルしてきて、切なさ最高潮でした。
おはまが実の母だと分かって、思わず「おっかさん…」と立ち上がって歩み寄ろうとするところも、めちゃめちゃ切なかったな…。
玉三郎さんのおはまはこれが初役(意外だわ)。
気丈な女将が、わが子の出現に心が揺れるありさまがつぶさに演じられていました。
後半、お登世を抱いて激しく慟哭する姿には、「娘可愛さに忠太郎を突っぱねた…と言いながらも、本心は、娘と同じくらい忠太郎のことも可愛く思っていたんだろうな」と感じ、胸が痛くなりました。
忠太郎の妹(父親が違う?)お登世は七之助さん。
本当の兄弟がきょうだい役を演じるということは歌舞伎ではよくありますが、今回は物語の内容のこともあり、忠太郎の「よく似てるなあ…」というセリフ(リアリティありすぎて少し笑ったけど、よく考えれば、すごく重い一言ですよね)が胸にずっしりと響きました。
しがらみに関係なく、純粋に兄を大切に思うお登世の気持ちがとても美しく、こちらも心が洗われました。
弟分の半次郎を演じた亀鶴さんは、屈折しながらも母や妹を心から思い、忠太郎を兄と慕う、温かく切ない演技が上手かったです。母親役の竹三郎さん、妹役の壱太郎さんも好演。
道端で三味線を弾いて生計を立てる老婆の橘太郎さん、年を取ってからも夜鷹として生きるしかない、おとらの歌女之丞さん、お二人ともベテランらしく感情の出し方がとてもうまいです。   
そのほか、おはまの店の板前の亀蔵さんや下女のいてうさん(意外にも少女の役!なかなか可愛かった)、魚屋や美人芸者(とくに雁成さんの美しさにうっとり)などの通行の人々に至るまで、あの時代の雰囲気をしっかり感じさせて、とてもいい盛り上げ方をしていたと思います。

P・S 開演前と終演後のロビーに勘九郎さんの奥様・前田愛さんの姿が。テレビで見たそのまんまで、ママになってもすっごく可愛かったです!
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