「二月花形歌舞伎」昼も夜も(1)
ずっと楽しみにしていた松竹座の「二月花形歌舞伎」、一昨日、昼夜通しで見てきました。
松竹座は去年の2月も花形歌舞伎で、「大当たり伏見の富くじ」などユニークな演目で大盛り上がりでしたが、今年も盛り上がりがすごくてとても楽しかったです。
これから先も「二月花形歌舞伎」が定着していって、出ていなかった若手たちが「自分も出たかった!」とくやしがるような、意欲的な演目を上演し続けてくれたら…と思います(そして、くやしがった面々が次の年に出てくれればなお良し)。

さてさて、今年の昼の部は「南総里見八犬伝」の書き換え狂言である「新八犬伝」。
11年前、シアタードラマシティで上演された「平成若衆歌舞伎」の第1作を、松竹座上演に合わせてバージョンアップした作品です。
「平成若衆歌舞伎」は残念ながら一度も見ることはできませんでしたが、秀太郎さんの著書「上方のをんな」でその誕生の経緯を知り、また、第4作でのタカラジェンヌとの共演も映像で見ていたので、今回の上演に、どこか他人事とは思えぬ感慨があります。
新作とはいえ、照明や細かな演出以外は古典的な歌舞伎に近く、以前に南座で上演された復活狂言「霧太郎天狗酒醼(きりたろうてんぐのさかもり)」にも似ていたと思います(そういえば、あの作品で愛之助さんが天狗をやってたなー)。
舞台には伸び盛りの若い俳優達が色とりどりの衣装で出てきて、なんとも華やか!
もちろん、技術面は彼らのお父さん・お祖父さん世代には到底かないませんが、前へ前へと進んでいく意欲が感じられ、みんなとても魅力的です。
そして、その若い面々の前に悪の主人公として立ちはだかるのが、今回の座頭である愛之助さん。   
いつもは爽やかな愛之助さんですが、今回は公家悪の隈取がぴったりくる大きさが出ていて、この物語が八犬士の物語でありながら、実は天狗の大魔王となった崇徳院のピカレスク・ロマンであるということがよく分かります(崇徳さんもかわいそうな人ではあるんだけどね)。
物語の鍵を握る伏姫の梅枝さんは、昨年五月以来の大阪お目見えですが、瑞々しい美しさに加えてスケールの大きさも備わり、とてもいい女形に成長しているな~と嬉しくなりました。
愛之助さんと同様に、この作品を「お兄さん」として引っぱる犬山道節の薪車さん、梅丸さんと双子の兄妹というのはちょっと笑ってしまったけど(ごめん)、相変わらずのかっこよさ!そして、情感あふれるお芝居で舞台を引きしめていたと思います。
犬塚信乃の松也さん、いや~、すごい成長ぶりです!華といい、品といい、単なる「若手」から「花形」へ、見事な変貌を遂げましたね。屋根の上での大立ち回りの時、上を脱いで赤い襦袢になるのですが、あざやかな色が似合っていてかっこいい
仕官する気持ちは固まりながらも、恋人の濱路を残していくことだけが心残り…とつぶやくところは甘さもあり、よかったと思います。
秋にはミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(ジェラール・プレスギュルヴィック版)でベンヴォーリオを演じることになり(発表されたときびっくりしたよー!)、今からすごく楽しみなのですが、花道で見得を切る姿を見て、なぜか「あ、これならベンヴォーリオも大丈夫!期待できそう」という予感のようなものがありました(笑)。
犬川荘介の巳之助さん 誰よりもよく通る声で爽やかに好演。「みっくんってこんなに声が良かったんだ!」と驚きました。見るたびに成長していて頼もしいです。
犬坂毛野の壱太郎さん、本当は男性なのですが、敵をおびき寄せるために女装して、「男嫌いの遊女」というふれこみで売っているのですが(そんなん、商売あがったりやがな!)、正体を現すところで、かんざしを一本ずつ抜いていく度に、はんなりした太夫の表情が凛々しい若武者に変わり、その変化がめちゃめちゃかっこよくて、思わず「若成駒!」と声をかけたくなるくらいでした。
壱太郎さんの女形の可憐さはよく知られているところですが、今回は男性としての凛々しさに魅力を感じました。
足利成氏の萬太郎さん、人情味あふれる「お江戸みやげ」の角兵衛獅子の兄が印象に残っていますが、今回は庶民ではなくお殿様。いかにも萬屋の御曹司らしい端正な顔立ちが若殿にぴったりです。
信乃の恋人・濱路はこれが大阪初お目見えの梅丸さん。まだ高校生で変声期のため、台詞が聞き取りづらいのはしょうがないのですが、可憐な容姿で目を引きます。七之助さんのような香り立つ女形になってほしいなと思いました。
種之助さん(犬村角太郎)、吉太朗さん(犬江親兵衛)、萬太郎さんのもう一つの役である犬田小文吾は、何の説明もなしにいきなり出てくるので驚いてしまうんですが、立ち回りがかっこよかったです。
そして、「この企画のすべてはこの方から始まった」といっても過言ではない秀太郎さん!
一つの役で品のいい未亡人も、色と欲とに目がくらむ悪女も見られるのはとても面白かったです。
そして、殺されるシーンがセクシーだぁ~あの色気、若手たちにぜひ学んで欲しいですね。
若手中心ではありますが、舞台の引き締まりはベテラン勢あってこそのもの。
吉弥さんはいつにも増して美しく、清らか。
扇之丞さんのはんなりと風情ある所作はさすがです。いつもガン見してしまうんだよねー。
當十郎さんのコミカルな味わいも健在でとても嬉しいです。  
11年前にメインキャストを務めた上方歌舞伎塾出身者の活躍もめざましいです。
千壽さんは毎年2月になると犬になる運命なんだろうか(笑)。りき弥さんはいつも本当に綺麗ですね~。腰元がよく似合ってます。
いつかまた、若いメンバーで、こんどは義太夫狂言も見てみたいなと思いました。有名な狂言はもとより、書き換えや復活狂言で何か面白いものがあったらぜひやってほしいです。

夜の部の感想はまた次の記事で…。
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