「二月花形歌舞伎」昼も夜も(2)
前回に引き続き、二月花形歌舞伎の感想です。
昨日載せた(1)は、最初、いろいろ取り散らかしたまま慌ててUPしてしまったので加筆・訂正を行いました。
実はまだ漏れ落ちもあるので、それはこの記事の末尾に載せておきます。

では、夜の部「GOEMON」のお話を。
この演目は、一昨年、大塚国際美術館の「システィーナホール」で上演されたものですが、まず異色中の異色作と言ってよいでしょう。
去年の「伏見の富くじ」を見て「歌舞伎は今現在も生きて呼吸している」と感じたのですが、この「GOEMON」は叫び、疾走しているという感じで、とてもエキサイティング!まさに「かぶいて」いるんです。
三代目猿之助(現・猿翁)さんが生み出したスーパー歌舞伎も新たなエネルギーに満ちていましたが、これは21世紀の歌舞伎として、更にもう一段飛び越えた感があります。

一昨年上演されたシスティーナホールは、バチカンのシスティーナ礼拝堂とまったく同じサイズでミケランジェロの「最後の審判」の大壁画・「天地創造」の天井画が再現されており、それ自体が舞台美術であり、劇場空間でもあったわけですが(私は映像でしか見てないので、たしかなことは言えませんが)、今回の松竹座は、そのシチュエーションがない状態を逆手に取った大胆な舞台構成。
一般の現代劇やミュージカル、コンサートで使われるような鉄骨組み(十字架をモチーフにしています)、回り舞台の真ん中に設けられた簡素なセット、そして、強烈な照明。
圧巻は南禅寺の山門。大きさは「楼門五三桐」に出てくる門とほぼ同じくらい(かなり大きいです)、満開の桜と豪華な装飾に代わって鉄骨と照明がギラギラ輝いており、シンプルでも迫力がありました。
そこで「絶景かな、絶景かな」とやる愛之助さん五右衛門の豪快さにもしびれます。
二度の宙乗りでの笑いは、荒事の雰囲気がありました(宙乗りといえば、鷹に「さあ母上、参りましょう」と言ったのはちょっと笑ってしまった)。
愛之助さんは話の雰囲気に合わせてか、どこか現代的な五右衛門で、豪快さの中にもきびきびとした雰囲気があるのがいいですね。

この作品の一番の特徴は、歌舞伎以外のジャンルとのコラボ。
特に、スペイン人神父・カルデロン(松也さん)と明智光秀の家臣の娘・石田局(梅枝さん)との間に生まれた五右衛門という設定から、全体を通してフラメンコが重要な役割を果たしています。
劇中で五右衛門が「フラメンコは魂の踊り」だと言っているのですが、フラメンコダンサーの佐藤浩希さんの踊りは、まさにその「魂」の化身。美しく、情熱的で、セクシーで、パワフルで、作品の世界にぴったり合っていると思います。
日本人である佐藤さんがスペインの魂であるフラメンコを踊っているということも、五右衛門の存在とどこかかぶっているなと思いました。
カルデロンが幻想の中で友市(子供の頃の五右衛門。吉太朗さん)とフラメンコを踊るシーン、五右衛門が出雲阿国(壱太郎さん)にせがまれてフラメンコを教え、それを阿国が発展させて激しく踊るシーンは、歌舞伎俳優がフラメンコを踊るというきわめて異色なものですが、フラメンコのリズムや踊りが驚くほど違和感なく、歌舞伎の始祖・阿国もきっといろんな面白いものを取り入れて「かぶき踊り」を作ったんだろうな~と思いをめぐらすことができます(もしかしたら本当にフラメンコも取り入れてたかも~(笑))。
また、阿国の弟子としてOSKの卒業生たちが出ており(着物のほかに、洋装でのダンスもあります)、他にもコロス的に男女の俳優さんたちが出ています。
音楽も下座音楽に加えて、バイオリンなどの弦楽器やパーカッション、フラメンコギターとカンテ(歌手)、邦楽からは筝曲など、さまざまな要素が取り入れられています。
とくに大薩摩とフラメンコギターの掛け合いは迫力があっておもしろく、三味線とギターの音色のハーモニーには独特の哀愁がありました。
こんなふうにいろいろな要素を取り入れながらも、浄瑠璃が入ったり、歌舞伎でよく使われる手法や型などの基本は押さえてあり(私はまだまだ気づかないところもあるけど、詳しい方はどんな演目のどの要素が入っているのかちゃんと分かって楽しいだろうな~)、歌舞伎としてきちんと成立しているのがすごいです。
そして、出演している10代・20代の俳優たちが、この作品によって若い感性にどれほどの刺激を受けているかと思うと、ますます彼らの行く末が楽しみになってきます。

夜の部の上置きは、ベテランというよりはちょっと先輩格な吉弥さんと翫雀さん。
吉弥さんは北政所と名古屋山三の二役。
北政所は嫉妬で怒っていながらもどこか可愛らしくて、若かりし頃の秀吉とのやりとりを話すところは少しコミカルで笑ってしまいます。
名古屋山三は若々しく爽やかで、終盤には立ち回りまで見せて大活躍。見た目も気性もいい男だったなぁ。
余談ですが、助太刀をしにきたときの衣装が「本朝廿四孝」の勝頼と同じもので、吉弥さんの勝頼も見てみたいと思いました。
翫雀さんは重要な役どころである秀吉。権力者で好色でちょっと悪いヤツな感じを出しているのにもかかわらず、阿国をはべらせようとした現場に北政所が来ると知って「なにっ、奥が!」と慌てる姿が可愛かったです(笑)

さてさて、若手の方たちも見てみましょう。
カルデロン神父の松也さん、歌舞伎の舞台で一人だけスペイン人役というのはさぞ大変だったでしょう。化粧にずいぶんと苦心しているようでしたが(元OSKの方も出ているので、アドバイスをもらってみてもいいかも。既に教えてもらってるかな?)、演技は切なく美しく、特に浄瑠璃とフラメンコのところでは悲しみが胸に迫りました。
石田局の梅枝さん、昼夜ともに魂として出てくる場面があり、時空を超えた雰囲気が、スケール感を増した彼にぴったりだなと思いました。
また、冒頭でカルデロン神父に、自分の愛と、子どもができたことを伝える場面は、光秀の重臣の娘らしい気品が漂っていました。
阿国の壱太郎さんは「止め女」として出てくるところに阿国らしいキリッとした雰囲気があり、特によかったと思います。
この場面の台詞には「飛んで入りたる寒すずめ」や「成駒屋」など、壱太郎さんの家紋・屋号が織り込まれていて面白かったな。
フラメンコは、教えてもらっているところではステップに色気があり、自分独自のフラメンコを踊っているときには「狂い」を感じるほどの激しさがありました。
昨年以来、私の押しメン(笑)な種之助さんは加藤虎之助(清正)を演じています。
初日近くになって夜の部も出演と発表されたので、出番どれくらいなんだろう?と思ってたのですが、第一部も第二部も五右衛門を追いかけて大活躍!
刀を持ったままぐるぐるぐるぐる…どんだけ回るんだ!しかも回りに回った後で2階客席にまで登場して立ち回り。若いねえ。今更ながら19歳の体力に感心…とか言ってる間に20歳になりますね。お誕生日おめでとう!
それにしても、種ちゃんはお父さん(又五郎さん)そっくりやな~(笑)。
そういえば、2階客席での立ち回り。私は3階にいたので、どうなっていたのか詳しくは分からないのですが、桟敷の扉から愛之助さん、壱太郎さんの姿が見えたときは興奮しました!
できれば3階にも来て欲しかったな~。
まあ、距離的に大変でしょうから、立ち回りは無理かもしれないけど、秀吉の手下たちが「五右衛門、どこへ行ったー!」と駆け抜けてくれるだけでも嬉しいのにな~。
石田三成の梅丸さん、美男子の優男ですが、きちんと立役の見せ方で、年相応の青年らしさが漂っていました。
友市の吉太朗さん、両親と別れ、一人ぼっちになったときに「父上の国はどこですか?」とあどけなく話す姿に 涙が出そうになりました。
吉太朗さんはまだ小学6年生なのに、時にはませた雰囲気になったり、かと思うと、もっと幼く、あどけなくなったり、作品によって全部印象が違っていて、すごくお芝居が上手いなと思います。
フラメンコはステップがしっかりしていて、さすが若い子は吸収が早いなと感心してしまいます。そして、踊りでも父を思う切なさをお芝居としてきちんと出していて上手かったです。

それにしても今回は、大向こうの方々もけっこうノリがよくて面白さ倍増だったな。
大向こうというと歌舞伎通の方というイメージで、こういった作品は「異端」ととらえて冷ややかなのかと思っていましたが、とても楽しげに声をかけておられて、本当に歌舞伎を愛している姿勢が感じられました。
とくにフラメンコのシーン。「オーレィ!」などと声をかけていて「おっちゃんら、いつそんなん覚えてん!」と驚いてしまいました(笑)。
五右衛門がフラメンコを踊るシーンでも、けっこう早く「待ってました!」の声がかかり、愛之助さんがそれに応えて頷いていました(笑)。ちなみに、五右衛門と阿国が踊るところでは「ご両人!」と声がかかっていました。吉野山じゃなくてもそうなのね(笑)。

さてさて、前回の漏れ落ちはコレ。
写真を載せるのをすっかり忘れてました。
hanagatakabuki2

hanagatakabuki1
はー、楽しかったなー。
来年もまた意欲的な演目を見せてくださいね
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