南座 五月花形歌舞伎 昼の部
先月、歌舞伎鑑賞教室で南座に行きましたが、今月もまたまた南座に見参。
海老蔵さんが座頭をつとめる五月花形歌舞伎です。
今回は昼の部を見てきました。

まず最初は、新歌舞伎十八番の内「高時」。
河竹黙阿弥が明治に入ってから作った活歴物(歴史考証をした風俗で描く歌舞伎)です。
右近さん演じる執権・北条高時は、自分の飼っていた犬を死なせた侍の一家を死罪にすると言い出して聞かず、家臣になだめすかされてようやく取りやめますが、その夜、どこからともなく現れた天狗たちに翻弄されます。
だいぶ前のNHK大河ドラマ「太平記」でも、北条高時が天狗の幻を見て怯える場面がありましたが、実質的に彼の代で鎌倉幕府が滅びていますので、何かそれを暗示させるかのような舞踊劇でした。
右近さんの声がやや小さく感じられて、聞き取りにくい箇所もありましたが(実は、近くの席から話し声も聞こえていたので、右近さんだけのせいではないのですが…)、前半は颯爽とした橘太郎さんの立ち回りや、可愛い野良犬2匹を演じた子役ちゃんたちがとても良く、また、高時の権力によって捕らえられる一族の姿に哀れさを感じました。
後半は、高時と天狗たちが絡んで踊る様子が圧巻!
右近さんがちゃんと天狗に「踊らされている」ように踊っていて、また宙に浮く(ワイヤーで吊られています)など、アクロバティックなところも、アクロバットではなく芝居として見せていて良かったなと思います。
天狗を演じた方たちの踊りは本当に大変なものだと思いますが、、日頃の鍛錬が見事に生きている気がします。
ほか、愛妾の衣笠を演じた笑也さんや侍女の面々が皆美しく、物腰にさすがと思わせるものがありました。

二番目は「太刀盗人」。
狂言を元にした松羽目物で、コメディタッチな楽しいお芝居でした。
若手の亀三郎さんと松也さんが主になるのですが、若さや勢いだけでは演じきれない演目に果敢に挑む姿勢が感じられ、好感がもてます。
田舎者万兵衛を演じた亀三郎さんのほうが年上なのですが、やはり一日の長が感じられ、よく通る声や小気味のいい踊りが印象的でした。
すっぱの九郎兵衛の松也さんは今は精いっぱい頑張っているという感じですが、これから何度も上演を重ねていけば、かなり良い味わいが出るだろうなと思います。
目代を演じた市蔵さんはさすがの実力。おじいちゃん目代なので耳が遠かったり、寝ていたり、そういった細かいところもとても面白かったです。
従者の新十郎さんは、引っ込みすぎず出すぎず、ほどよい加減で、また若さも感じられて好演でした。

切りは、待ってました!歌舞伎十八番「鎌髭」です。
十八番に選ばれながら長く上演が途絶えていたこの演目を、今回、海老蔵さんをはじめとする方々が復活させ、本邦初お目見えとなりました。
途中で海老蔵さんの口上があり、先日亡くなった團十郎さんに演じてもらいたかった旨が述べられて、少し涙ぐんでしまいました。
更に、團十郎さん最後の舞台が南座であり、その南座で演じられることが幸せだという海老蔵さんの気持ちにも涙…。
半年前に石切梶原を演じていた團十郎さんがもうこの世にいないというのが未だに信じられませんが、その意志を受け継いでいく海老蔵さんが、これから十八番をすべて演じるのを楽しみにしています。
さて、狂言に戻りますが、この「鎌髭」は、平家方の猛者・悪七兵衛景清が、源氏方の罠と知りながら、鍛冶屋に化けた三保谷四郎らの元に出向く姿を大らかに描いたもの。
景清はだまされたふりをして大酒を飲み、伸びた髭を鎌で剃ってくれと言いますが、観音菩薩の加護を受けていて不死身なので、源氏方が鎌などで斬り付けても死なないという豪快なおもしろさ。
荒事は細かいことを考えず、スカッとできるのがいいですね。華やかで、打ち出しにふさわしい演目になったと思います。
海老蔵さんは口跡にやや改善が見られ、また、どっしりとした大らかさが備わって頼もしくなってきました。
脇を固める面々では、猿弥さんの入道がユーモラスで可愛げもあり、チャリ役の市蔵さんらと共に舞台を盛り上げていたと思います。
三保谷の左團次さんは、もちろん初役ながらすっかり安心して見られるところがいいですね。セリフ回しに味があって、三保谷の策謀家らしさを感じました。
源氏方の若侍を演じた亀三郎さんと松也さん、この演目で唯一の女形である新悟さんの三人は若々しい華があります。
新悟さんの演技に七之助さんを思わせるところがあってハッとしました。
ともに勘三郎さんの元で修行した二人であり、年下の新悟さんが七之助さんを見て勉強しているんだなということが感じられます。

若手中心の花形歌舞伎であり、また歌舞伎座開場の影響もあって、出演者は少なめな印象を受けましたが、五月の若葉を思わせる伸び盛りの面々を見ることができ、また若い名題下の方々の活躍もあって、清々しい舞台だったと思います。
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