七月大歌舞伎 夜の部
ちょっとご無沙汰しております。
昨日、七夕の日に松竹座の七月大歌舞伎・夜の部を見てきました。
うだるような暑さの道頓堀に幟がはためいています。
大阪初お目見え・児太郎さんの真新しい幟も。
SYOUCHIKUZA
もっとよく見えるように撮ろうと劇場のほうへ寄って行ったら、壁で頭を打ちました

気を取り直して、まず最初の演目は「曽我物語」
歌舞伎では本当によく出てくる曽我兄弟ですが、歌舞伎を見始めて「そもそもこの人たちどういう人?」と思った時の入門編にちょうどいいのでは?と思いました。
これを見ると、本当によく分かります。
ただし、単純かというと、必ずしもそうではない。
セリフの行間に心の機微が描かれ、大人がそこに哀れを感じたりすることにじゅうぶん耐えうる作品です。
曽我の十郎・五郎やその弟・禅師坊らがまだ十代や二十代の若年であり、感情をあらわに出す(とくに五郎。「壽曽我対面」そのままの性格です)のとは対照的に、ひとりだけ父親が違う長兄・小次郎は心理を淡々と述べる。
その淡々とした中に複雑な思いがにじみます。
小次郎の我當さんは、三十代くらいの設定にしては枯淡の境地に達しすぎなところもありますが(実年齢を考えれば無理からぬことですが)、討たれた二度目の父を敬う気持ちもありつつ、幼い頃に亡くなった実の父が恋しいというのもよく分かるなぁと思いました。
我當さんと、十郎の翫雀さん、五郎の進之介さん、禅師坊の薪車さんという四人の並びは清々しく、切なく、富士山が見える箱根湖畔という舞台設定もきれいでした(図らずもタイムリーだったし)。

次の演目は「一条大蔵譚」。
年に一、二度は必ず上演されているのですが、いつも遠方だったので見れずじまいでした。
それが今回、念願かなっての初観劇となりました。
源氏再興の思いを胸に隠し、阿呆を演じる一条大蔵卿と、仁左衛門さんの愛嬌ある持ち味がとても合っていて可愛らしかったです。
扇で顔を隠し、一瞬まともな表情を見せるところにはハッとしました。
秀太郎さんの常盤御前は、儚げに見えながら心はとても強い女性。敗軍の将の妻から清盛の妾にさせられ、さらに大蔵卿の妻として下げ渡されても、心は流されていない女性でした。
秀太郎さんは義太夫狂言のヒロインにふさわしいセリフ回しとオーラが印象的。これからもまた義太夫ものをたくさん見たいなーと感じました。
鬼次郎の橋之助さん・お京の孝太郎さんはナイスコンビで本当に美しかった!孝太郎さんはこういうキリッとしたのが似合うなー。
あと、亀蔵さんの勘解由(かげゆ)もよかった。私、今まで、歌舞伎の悪役を表現する「べリベリとした」というのがどういうのかハッキリ分かってなかったんですが、亀蔵さんを見て、「ああこういうのを『ベリベリとした』というんだな」と納得しました!それでも、どこか憎めない可愛らしさがあるのが亀蔵さんのいいところ。
そして、やはり思い出したのは、先日の記録映画で見た十三代目仁左衛門さんの指導風景。
そういえば、十三代目は「去(い)なしゃませ」の言い回しを何度も指導していらしたな~。
もうひとつ、この大蔵卿は勘三郎さんの当たり役でした。仁左衛門さんも今回は中村屋をしのびつつ演じたいとおっしゃってます。
兄と慕った仁左衛門さんの大蔵卿、きっと、勘三郎さんもどこかで見てるんだろうなぁ…と思ったら、話に関係ないことではありますが、ちょっとジーンときてしまいました…。

おしまいは「杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)」。
とにかく面白かったー!
福助さんの土手のお六がホントぴったりで、きれいでカッコいい!暑い浪速に、江戸の風がすーっと吹くようでした。
弟・橋之助さんと息の合ったコンビぶりもとても楽しいです。
お六は悪女風で詐欺もはたらくけれど、実はそれは義のためというのもカッコいい!
登場人物が多く、幹部俳優ばかりでなくお弟子さんたちにも大きな役が回ってきたのも良かったなと思います。
衝撃の結末を迎える恋人同士を演じた翫雀さん・扇雀さん兄弟も大活躍。
浪人・佐野次郎左衛門の翫雀さんは、一瞬、藤十郎さんかと思うくらいそっくりでした。
江戸風の二枚目を演じても、どうしようもない人間の業が浮かび上がるのが翫雀さんらしい感じ。
扇雀さんは薄幸の遊女がよく似合い、見ていても胸が痛くなるような、可哀相な雰囲気があります。
亀鶴さんと薪車さんのアラフォーコンビの充実ぶり(演技に幅や深みが出てきたと思います)、児太郎さんの清純きわまりない美しさも印象に残りました。

今回の七月大歌舞伎、ホントにベストメンバーで、どの演目も充実していて楽しかったので、ついつい昼の部のチケットも買ってしまいました~(苦笑)。
また見に行ったらお伝えしますね。
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