愛の殉教者―「ロミオ&ジュリエット」―
2年越しの念願叶って、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を見ることができました!
宝塚版は何度も見ているんですが、東宝版では初めて。
宝塚版には出てこない場面や、東宝版のみリプライズしている曲などはありますが、全体的な筋運び、ナンバーの順序などは、ほぼ宝塚版を踏襲して作られていました。(ちなみに、同じ小池修一郎先生の演出でも、「エリザベート」は宝塚版と東宝版で筋運びが少し違っています。)
一番の違いは、この物語を象徴する存在として出てくるダンサーが、宝塚版では「愛」と「死」の二人なのですが、東宝版では「愛」は出てこず「死」だけが出てきます。
これが逆に面白かった!
「死」は、ある時は憎しみや絶望の象徴となり、またある時は「メメント・モリ(死を忘れるな)」という言葉の象徴となり、最後にはキリストの磔刑図となって「愛」に殉じた二人の象徴となる…というふうに、様々な意味を持つものに見えました。
特に、最後の磔刑の姿は重要で、「愛の殉教者となったロミオとジュリエットの死がヴェローナに平和をもたらす」という、この作品最大のテーマを余すところなく伝えてくれます。
また、宝塚版では時代設定をあまりはっきりさせていなかったのですが(それでも中世やルネサンス時代ほど遠い昔ではないという感じ)、東宝版ではスマホやパソコンという現代文明が出てきます。
初演の時にそのことを風の噂で聞いて、「ミスマッチじゃないの?」と思ってたんですが、今回実際に見てみて、時代性を特に強調していない衣装や大道具、逆に思いきりクラシカルな紋章や「大公」という存在、そして現代文明という「ごった煮」感に、「こんな事件はいつの時代でも起こり得るんだ。だから、今現在でも安易に憎しみ合うことは怖いことなんだ」というメッセージを感じ、却って良かったなと思いました。
あと、ラストに全員がキャンドルを持って、亡くなったロミオとジュリエットを優しく囲むのも東宝版独自の演出。これはほんとうに感動的でした。

総じていえば、宝塚版は「愛」と「死」が交錯し合う中でのロマンを描き、東宝版では現実に起こる争いと平和を描いたという感じでしょうか。

今回のロミオは城田優くん。実年齢より10歳くらい若い役ですが、最初に出てきた時の表情が予想以上にあどけなく、「なんて可愛い少年なんでしょう!」と驚きました。まだときめいたりすることを知らないから、少女たちの誘いにも関心がないという幼さ、美しい恋に憧れる純粋さがよく出ていました。
ジュリエットへの愛を知った後はもう、ひたすら突っ走る!
その純粋さの中には「周りが見えなくなる」という欠点も「愛の前には愚かな憎しみなど消える」という美点もあるといった感じでしょうか。
ジュリエット役のフランク莉奈さんは、愛らしい容姿と幅広い音域の歌声で、美しい乙女ではあるけれど感情の起伏も激しい、生きたジュリエットを体現していたと思います。
ティボルトの加藤和樹さんは、「いつキレるとも知れない危ない男」といわれる危険な雰囲気を強く出す一方、「今のオレは本当のオレじゃない」と苦しむ、ナイーブで繊細な少年の心も表現していて、とても良かった!今後の活躍が期待できます。
ベンヴォーリオの尾上松也さん、いつも歌舞伎で見ている松也さんがどんな歌やダンスをするのか、非常に興味があったのですが、かなり上手くて違和感がまったくない!(しいて言えば、日本舞踊をやっている人のダンスの特徴として、重心が低めです。でも、そのおかげで脚さばきに小回りがきいていると思うので、これは利点でもあります。ちなみに、宝塚の轟悠さんのダンスもこういう感じです。)ミュージカル界に新星登場ですね。
演技的には、憎しみを捨てて愛に目覚めるところがもう少しはっきり見えればいいな~と思ったんですが、「どうやって伝えよう」のナンバーには、突然の不幸を体験した少年の狼狽や哀しみ、そして、その中での決意を感じて涙が出ました。
マーキューシオの東山光明さん、宝塚版でもマーキューシオはキレた奴なんですが、そこからもう一段現実的な、道ですれちがいたくないような不良(笑)。でも、それは彼が悪いのではなく、二つの家の対立そのものが彼をこんなふうにしてしまったというところが見えました。だからこそ、彼は最後にロミオに「ジュリエットを愛し抜け」と言って死んだんだろうなぁ。
松也さんと同様、非常に興味があったのが、乳母役の未来優希さん。抜群の歌唱力で活躍した元宝塚の男役さんです。宝塚時代、私は大ファンだったんですが、退団してから見るのは今回が初めて。
さすがに上手くて達者な演技ぶり。「あの子は貴方を愛している」のナンバーもじっくりと聴かせてくれて、「私が生んだ子じゃない でも私の子に違いない」という歌詞には涙が止まりませんでした。
キャピュレット夫人の涼風真世さんは、自由奔放と見せかけて、実は深く屈折した心を持つ女性を陰影豊かに表現。私は彼女の宝塚時代は映像でしか見たことがなかったのですが、今回初めて生で見ることができて、迫力ある歌と演技がとてもいいなと思いました。
モンタギュー夫人の鈴木結香里さんには、母の落ち着きと芯の強さがあります。
おもしろいなと思ったのは、モンタギュー卿のひのあらたさんと二人で、いかにも夫婦らしい空気をかもし出していたこと。未婚の乙女の集団である宝塚版では、「父」「母」という存在感は演技で表現できても、熟年夫婦の空気まではなかなか難しいですからねぇ。
キャピュレット卿の石川禅さんとロレンス神父役の安崎求さんは、共に歌唱力が印象的。オペラに近いような響きがとても良かった!上手さに加えて、役のキャラクターや心情が歌声に表れているところもいいですね。
パリス伯爵には岡田亮輔さん。おちゃめで空気の読めないおぼっちゃんぶりが楽しく、唯一ずっと明るい人物というのを表現できていたと思います。
大公の中山昇さんは、殺人が起こった後の「ヴェローナ」のリプライズで、絶望と悲しみをにじませて好演。ほんとに「こんな事態にまでなって…両家とも早く気づけよ!」と思いますね。
「死」のダンサーの中島周さんは、幽霊のような冷ややかな存在感を保ちつつ、何種類にも変化する「死」のイメージを抜群のダンス力で表現していたと思います。
そして、モンタギュー・キャピュレット両家の面々を演じたR&Jダンサーズ26人のハイレベルなダンス。
ダンサーの中には、お芝居は初めてという人もおられたと思いますが、セリフがない人も動きと表情できちんとお芝居していて上手いなあと思いました。

この日は東京・大阪公演の大千秋楽。
一度目のカーテンコールでは、ダンサーズを代表して遠山さん、そして役名のある皆さんの挨拶がありました。
涼風さんの「昔妖精、今妖怪」には笑ったな~。たしかに妖精PUCKやってたけど(笑)。そして、元タカラジェンヌの二人はさすがに挨拶が上手いなと思いました。
あと、松竹座で私の2列くらい後ろに座っていそうな(笑)大向こうさんも見に来られてたのか、松也さんに「音羽屋!」のかけ声が。
その後も何度もカーテンコールが続いて、ダンスあり(中島さんが「大阪愛」と書かれた掛け軸を持って出て大爆笑!)、先に千秋楽を迎えたダブル・トリプルキャストの登場あり、城田君が将来の夢を宣言あり、「みんなでやりきった!」という安堵感と「もっと一緒にやりたかった」という名残惜しさが交差していて、たいへん盛り上がりました。
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