當る午歳 吉例顔見世興行
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今年もこの季節がやってまいりました。南座の顔見世です!
今回は猿之助さん・猿翁さん・中車さんの襲名披露公演です。

私が見たのは昨日の昼の部。
この絵看板に描いてある五つの演目です。
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まず最初は、「厳島招桧扇」通称「日招ぎの清盛」。
権勢を誇る平清盛が、沈んでいく夕日を桧扇で呼び戻したという伝説にちなんだもので、時代によってさまざまなストーリー展開で作られたようです。
今回は、栄華の道を突き進む清盛のエネルギーと共に、慈悲深い面も描いてあり、歌舞伎ではいつも悪人とされた清盛の名誉が、現代になって少し回復されているなぁと感じました(そういえば5月に海老蔵さんが景清を演じたときも、平家方ではあっても景清を根っからの悪人としては描かず、超人的なヒーローとして描いていました)。
上演時間は短いものの、厳島神社を描いた背景に公達・女房が居並ぶという絵巻物のような美しさがあり、その中でドラマチックな物語が展開されます。
清盛の我當さんは、脚が悪くなっていることもあり、動きは少なめなのですが、さすがに頼りがいのある棟梁が似合っており、寛容な心も感じられて良かったです。
清盛を暗殺しようと白拍子・仏御前になりすます源氏の遺児・九重姫の笑三郎さん、美しい!儚げな中に強さが漂います。踊りもやはりお上手でした。
あと、これまで膝の故障で歌舞伎出演が少なかった月乃助さんを久しぶりに見られて嬉しかったです!
また、この作品の音楽には琴が使われており、それがなんともいえない雅やかさを添えていたと思います。

二番目は「仮名手本忠臣蔵」八段目の「道行旅路の嫁入」。
時蔵さん・梅枝さんの親子共演ということでとても楽しみにしていました。
しかも、演じるのは(義理の仲ながら)母と娘という親子の役!
時蔵さんはどこかクールな女性を演じることが多いように思いますが、今回の戸無瀬は、武家の妻としてのしゃっきりした部分もありながら、娘への愛情にあふれた母だったと思います。
塩冶判官の家来である力弥と結婚できないのでは…と不安に沈む娘を明るく励ますような踊りが素敵でした。
梅枝さんの小浪は何とも可憐!
梅枝さんも父・時蔵さんと似た個性を持っているのか、クールだったり大人っぽかったりという役の印象があるのですが、今回は本当に可愛らしく、いじらしく、見ているこっちも共感して切なくなるような小浪でした。
この二人とすれ違う奴の可内(べくない)は翫雀さん。この役を翫雀さんで見るのは二度目ですが、前回よりもユーモラスさや洒脱さがある気がして、とても楽しく見ることができました。
こういうほんわかした役は翫雀さんに合いますね。

三つ目は「ぢいさんばあさん」。
中車さんの襲名披露です。
澤潟屋と成駒屋にゆかりの深い演目で、中車さんが主人公の伊織、扇雀さんがその妻るんを演じました。
中車さんの伊織は、若い時代は決まったとおりにやっている感があったのですが、おじいさんになってからがとても良かった!やっぱりこの人芝居上手いわ~。
扇雀さんは終始愛らしく、しっかり者のるんで、若い頃もおばあさんになってからも「良い女房だなあ」と感じることができました。
右近さんの下嶋、猿弥さんの久右衛門、月乃助さんの久弥、春猿さんのきく、それぞれに名演。なにより、澤潟屋一門の演技力、結束力を見ることができてよかったです。
そして、ここでも琴の音が効果的に使われていました。

四つ目は「二人碗久」。
仁左衛門さんが怪我により休演となり、碗屋久兵衛を愛之助さんが演じました。
古くからある舞踊ですが、現代劇のような照明や舞台転換が美しく、幻想的な雰囲気をかもし出していたと思います。
愛之助さんの碗久は儚さのある二枚目ぶり。松山太夫を演じた孝太郎さんには気品や情を感じました。
私は特に、中盤からのアップテンポなところが曲も踊りも美しくて好きで、時間を忘れて楽しむことができました。

そして昼の部の切は、「義経千本桜 川連法験館の場」通称「四の切」。
猿之助さん襲名披露のシンボルともいえる演目です。
開演前には、こちらもすっかり有名になった祝幕が掛かります。
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襲名披露はこの南座が最終ですので、この祝幕も見納めとなります。
さて、「四の切」。
まず最初に、川連法験を演じる段四郎さんが元気になって戻って来られて本当に嬉しいです。
ちょっと痩せたかな…とは思うものの、正義感あふれる法験は素敵でした。
義経の藤十郎さん、若い!綺麗!そして気品がすごかったです。
静御前の秀太郎さんも本当に美しくて、年齢を感じさせないのが凄いなと思いました。
そして、猿之助さん。
佐藤忠信はいかにも理知的な武将という感じ(猿之助さんで捌き役を見たいと思いました)。ケレンの間にちょっと顔をのぞかせるところにも役の性格がきちんと表現されています。
また、源九郎狐は、鼓にされた両親を恋しく思う子狐の心がいじらしく、切なく、思わず涙があふれるほどでした。
澤潟屋型独特のケレンはまさに秒単位のスペクタクル!裏方さん・黒衣さんとの連携もすごく重要なんだなと思いました。
そして、ここまで緊密にケレンをこなしつつ、情愛をしっかり出して演じる猿之助さんの芝居心にすっかり感心してしまいました。
あと、楽しかったのは、いかにも「顔見世の四の切」らしい豪華な配役。
藤十郎さん・秀太郎さんに加えて、猿之助さん・愛之助さん・松緑さんという花形三人が一同に顔を揃えるという豪華さ!これだけでも見にきた甲斐があります。
クライマックスの宙乗りは華やかさもさりながら、子狐の喜びを全身で表していて、最後まで役の心を感じることができました。
飛び去る狐を仲良く見つめる義経・静のお二人も情があってよかったな~。

今回は襲名披露に加えて、松之助さんの幹部昇進や多くの方の名題披露があり(殊に千次郎さんが大きな役を任されていて嬉しかった)、とてもおめでたく、華やぎに満ちた顔見世だったと思います。
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