三月花形歌舞伎 昼の部
21日に南座で「三月花形歌舞伎」を見てきました。
久々に一階席で見られるので、着物を着て行きたかったんですが、雨が降ったりやんだりでややこしく、やむなく洋服に。
5月の歌舞伎鑑賞教室には着て行きたいなあ…。

さて、今月昼の部の演目ですが、新歌舞伎の「吹雪峠」、狂言ものの「素襖落」、そしてお馴染み「与話情浮名横櫛」の三つで、上演時間もちょうどよく、ビギナーにも見やすい演目だったと思います。

「吹雪峠」は、亀三郎さんの直吉、松也さんの助蔵、梅枝さんのおえんという配役。
ちょっと前に孝太郎さんがおえんを演じたときにブログで「難しい」と書いてあり、どのように難しいのか、どんな話なのか気になっていたのですが、観劇してみて、この作品は、ただ演じるのではなく、毎回何かを感じて演じなければいけない作品なんだなぁと感じました。
命がけの恋に生きているはずなのに、いざとなれば相手よりも自分の身が大切になってしまう人間の浅ましさ、愚かさ、駆け落ちを許したはずなのに、嫉妬を感じて許せなくなってしまう哀しみ、そして人間の情っていったい何なんだろうと思うラストシーンの虚しさ…。若い三人にとって、すごく難しい心理劇ではあったと思いますが、若いがゆえに感情のほとばしりがはっきりと見えて、却って分かりやすかったと思います。
亀三郎さんは持ち前の口跡のよさが、時おり七五調になるセリフに合っていて好演。また、渡世人の男らしさや虚しさが表情にあらわれていました。
あと、亀ちゃんは同世代で、大好きなので、主役はうれしかったな(笑)。
松也さんは病身の役をやっていてもどこか華がありますね。歌舞伎以外のジャンルにも挑戦したことによってお芝居がとても上手くなった気がします。
そして、梅枝さん!この方は本当に成長著しいですね。ここまでセリフのある役は初めて見ましたが、ただ美しいだけではなく、セリフ回しに古風な味わいがあり、ちょっとしたしぐさに大人びた雰囲気が出てきたと思います(余談ですが、梅枝さん、曾祖父・三代目時蔵さんにそっくりになってきてますね!(まあ、私も写真でしか見たことがないんですが))

「素襖落」は楽しくて華やか。
松緑さん演じる太郎冠者がキュートで可笑しく、お酒に酔った時のセリフ回しが笑いを誘います。
姫御寮に新悟さん、次郎冠者に松也さん、三郎吾に巳之助さん(今回が南座初お目見えだったんですね。意外!)という若い面々でのお狂言ものは明るく爽やか。
殊に、姫御寮の新悟さんの成長ぶりに驚きました。すごく品があります。  
大名の権十郎さんはこういった明るい演目が似合いますね。上置きとしての巧さや頼もしさもあります。
太刀持の亀寿さんもきびきびとしていて愛嬌があり、好演です。

「与話情浮名横櫛」通称「斬られ与三」は、菊之助さんの与三郎、梅枝さんのお富で、ともに初役というフレッシュさ。
しかも美男美女コンビです!
与三郎の菊之助さん、若旦那の時も、ならず者になってからもめちゃめちゃかっこよくて惚れ惚れします。
いつも女形の美しさに感心しますが、与三郎がこんなにも似合うなんて驚きです。
梅枝さんのお富も美しく、粋で、この若さでここまでできるなんて!と感心しました。
演技はお父さんの時蔵さんによく似ていますが(そういえば、一昨年の南座で時蔵さんのお富を見たんですよね)、若い分、与三郎とお富が出会った時の心のときめきがダイレクトに伝わります(それは菊之助さんにも感じました)。
「お前を離しはしねえ」の後、二人でお酒を飲むのも、ほのぼのと可愛らしかったです。
團蔵さんの蝙蝠安は、出てきたときからゾワゾワくるような悪党ぶり!それが多左衛門の顔を見るや否や、悪党から小悪党になってしまうのが面白かった。いやもう、初役とは思えぬ上手さです。
客席も團蔵さんの演技に引き込まれてか、花道を引っ込む時に大きな拍手が起こりました。
彦三郎さんの多左衛門、さすがにこういう役はお手の物で、大番頭の立派さの中に、お富に対する優しさや包容力がにじみ出ており、理想的な多左衛門でした。
それにしても、今回の上置きは、彦三郎さん・萬次郎さん・権十郎さんの三兄弟に團蔵さんという、関西ではあまり見られない豪華な布陣ですね。
松緑さんの鳶頭金五郎は、太郎冠者から一転して、粋でいなせな江戸っ子。爽やかなセリフ回しが印象的でした。
酔っぱらいに酒を勧められて「前の演目で飲みすぎまして…。(菊之助さんを指して)こっちはゆうべ祇園で飲みすぎまして」とアドリブを返していたのも面白かったです。
橘太郎さんの番頭藤八は、小柄ながら軽いおかしみのある雰囲気で盛り上げていたと思います。昨年5月に見た「高時」での颯爽とした役とは全然違っていて、「あれ?こっちも橘太郎さんなんだ。上手いなあ」と感心しました。
お富の家の下女およしの蝶紫さんは、はんなりとして可愛らしかったです。

二ヶ月ぶりの歌舞伎でしたが、三演目とも「もう一度見たい!」と思えるほど楽しかったです。
顔見世のような豪華な顔合わせも好きですが、若手の熱演も本当にすがすがしくていいですね!
スポンサーサイト