七月大歌舞伎 夜の部
暑い浪花に、今年も熱い芝居がやって来ました!
今年の「七月大歌舞伎」は、仁左衛門さんの大阪での復帰公演。さらには翫雀さんの雁治郎襲名(来年一月・二月連続!で松竹座)が決まったこともあってか、華やかな雰囲気でした。

夜の部は「伊賀越道中双六 沼津」「身替座禅」「真景累ヶ淵 豊志賀の死」「女伊達」の四本。
バランスよく、メリハリの効いたラインアップでした。

「沼津」は私が文楽で初めて見た演目。そして、今回初めて歌舞伎で見ました。
文楽と歌舞伎でちょっとした違いはありますが、歌舞伎では人間が演じているからこそ出てくる体温を感じました。
十兵衛を演じる藤十郎さんは相変わらず若々しく(ホントに80歳超えてるとは思えない!)、上方らしい可愛らしさと、肉親の情と忠義との間で葛藤する姿が印象的。最後に平作を見つめながら両手をぐっと組み合わせるところで涙が出てしまいました。
今回は親子逆転の配役で、翫雀さんが十兵衛の実父・平作を演じました(ちなみに昨年11月の国立劇場もこの配役です)。
翫雀さん、見るたびに上方らしくなっていくなあ!重い荷物を持つ時の「やっとまかせ」の掛け声に上方らしさを色濃く感じました。
そして、特によかったのは「子ゆえの闇」をしっかりと出していた点。
どうにかして娘のお米とその恋人の仇討の願いをかなえてやりたいという愛情と、生き別れの息子・十兵衛の男としての立場もどうにか立ててやりたいと思う愛情、その二つの愛情のせめぎ合いがあのような行為に至ったのだというのがよく分かり、こちらも涙、涙でした。
扇雀さんのお米は、最初に出てきたときに元傾城の華やぎがパッとあふれていたのが印象的。いかにも若い男性の目を引きそうな美しい女性という感じが出ていました。
それともうひとつ、クドキのところで濃い陰影がでて、彼女の人物像や考えていることがハッキリしたのが良かったと思います。
総じてとても感動的だったのですが、この狂言は客席に降りるところがあるので、できれば1階か小さな劇場で見てみたいなと思いました。

打って変わって、華やかで楽しい「身替座禅」。
もう、仁左衛門さんの山蔭右京が可愛くて可愛くて!
一度花道に引っ込むところで、「かわいいっ!」と掛け声をかけたくなるような(そんな掛け声をかける人はいないだろうけど(笑))雰囲気。
右京って浮気者なのに、いつもウキウキと楽しげでなんだか憎めないんですよね。
翫雀さんの奥方玉の井は、ころんころんとしていて可愛い(笑)。狂言でいう「わわしい女房」なんですが、雰囲気が丸くて「キーッ」となっててもどこか和むような微笑ましさがあります。
橋之助さんの太郎冠者は明るくて人間味あふれる芝居で場を盛り上げてくれます。客席も橋之助さんの動きに逐一爆笑してしまうほどでした。
腰元の千枝・小枝を演じる梅枝さんと児太郎さんはキュートで可愛らしい。
梅枝さん、時蔵さんに似てきたなあ~。児太郎さんは相変わらず清楚な感じです。

「豊志賀の死」は、夏らしい怪談話。
でも、「ほんとに怖いのは人の心」というテーマがあるような気がします。
新吉に執着するあまり幽霊になってしまう豊志賀も怖いし、病になった豊志賀を(看病に疲れたとはいえ)捨ててしまおうとする新吉の心も怖い。
私は女性なのでついつい豊志賀の肩を持ってしまうんですが、同じ女性なだけに「豊志賀のようになったらどうしよう…」とも思ってしまいます(苦笑)。
見ているときは豊志賀のあまりにも唐突な登場のしかたについつい笑ってしまうんですが、後からじわじわ怖くなってきて、思い出すと、夜、寝られなくなるんじゃないかと思ってしまいました。
世話物を演じる時蔵さんは独特の色気があって好きなのですが、新吉に対して恋仲のなれなれしさみたいなものを感じさせるのが印象的でした。
幽霊になって出てきたときは、最初は驚くんですが、だんだん「悲しいなあ、豊志賀…」という気持ちになりました。
菊之助さんの新吉、白皙の美貌ぶりと、それに相反するかのようなリアルな芝居がよかった。
きれいな菊之助さんはこれまでもいっぱい見ましたが、こういった人間くさい芝居を見られたのは面白かったな。
芝居の上手さといえば、やはり竹三郎さん。ベテランだけあって、ちゃんとあの時代を生きている人になっていてすごいと思いました。上方の女方であることにとどまらず、立役、それも今回は江戸の人になっていて、しかもそれが違和感なくはまってました。
梅枝さんのお久は、数年前に演じた「お江戸みやげ」のお紺を彷彿とさせますが、可憐に見えて実はお紺よりしたたかなのかも…と思わせるものがあります。それも悪気のないしたたかさでおもしろいなと思いました。
萬太郎さんの噺家さん蝶、この役にはさすがに若すぎると思いましたが、落語をよく研究したのか、扇子の使い方などがとても上手かったように思います。
前回大阪に来た「夏祭浪花鑑」の時と同様、その時代や地域の雰囲気を出すことが要求される役で、こういった役をこなすことが、歌舞伎独自の空気を身につける修行になっているのかもな…とも思いました。

「女伊達」は理屈なしに楽しく見ることができる舞踊。
舞台は江戸の吉原になっていますが、もともとは大坂の女侠客をモデルにしたもの。
上方の女方である孝太郎さんが演じることで、江戸と上方の空気が程よくブレンドされたものになったのではないでしょうか。
それにしても孝太郎さん演じる女伊達、木崎のお秀(この名前は伯父さんの秀太郎さんからとったものでしょうか?)のみずみずしく美しいこと!しかも、お姐さんらしい粋さや貫録もあり、素敵でした。
その女伊達に絡む男伊達は、萬太郎さん・国生さんという若手イケメン二人。
国生さんは大阪初お目見えですが、お父さんの橋之助さんそっくり!
大柄でキリッとした顔立ちで、いかにも荒事が似合いそう。
萬太郎さんは何度かこの役を演じており(今回の国生さんのポジションだったこともあるようですが)、若いながらも江戸前のいなせな雰囲気が出せています。
所作ダテもいろんな趣向が凝らされていて面白かった!
とくに、床几(腰掛け)をひっくり返すと底に波の模様が描かれていて、それと傘を舟に見立てて涼むような振りが面白かったです。
床几の上でトンボ切ったのは誰だろう?めっちゃすごかったな~。
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