九月花形歌舞伎「壽三升景清」
ネタがなーんにもないので、すっかり御無沙汰してましたが、やっと復活です。
16日に、南座で九月花形歌舞伎「壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)」を見てきました。
これは今年の1月に東京の新橋演舞場で初演されたもので、歌舞伎十八番のうち、悪七兵衛景清を主人公とした「関羽」「鎌髭」「景清」「解脱」をもとに、通し狂言として新たに作り上げられた作品。今回の南座が二度目の上演となります。
時代物ですので難しいところもあるのかなと思っていたんですが、実際に見てみると分かりやすくて面白かった!
古典的な場面に現代の演出を加味した華やかな舞台(演出は藤間流宗家・藤間勘十郎さん)で、クライマックスは大いに盛り上がりました。

minamiza
幕開きの巨大な海老の絵からも分かるように(笑)主役の景清を演じるのは海老蔵さん。
最初のセリフの声がハッとするほど団十郎さんに似ていてびっくり
生前の団十郎さんが志した「歌舞伎十八番すべての復活上演」を受け継いだ今回の作品。もしかしたら、最後に舞台を踏んだ南座のどこかで団十郎さんが見守ってくれているのかも…。
海老蔵さんの発声も、以前とは見違えるように(聞き違えるように?)良くなり、スケールの大きな舞台にふさわしい華が備わっていたと思います。
景清の頬にある一筋の藍隈を、海老蔵さんは「平家の武将たちのみならず罪なき者たちまで死に追いやった源氏への恨み。心の陰」と解釈していましたが、その心理を描くことで古典的な世界の中に現代性が生まれ、その現代性が海老蔵さんの持ち味にもぴったり合っていました。
そして、源氏への恨みが消えた景清の頬には、藍色ではなく正義や元気の良さを表す赤い隈が。
隈取り一本にもストーリーが現れているところに感動を覚えました。

この作品および海老蔵さんをがっちり支えているのは、ベテランの左團次さん、中堅どころの翫雀さん・孝太郎さん。
殊に翫雀さんと孝太郎さんは新キャストにも関わらず、まるであて書きのように役にぴったりとはまってました。
翫雀さんの、単に捌き役というだけではない人物の大きさ、また、別の場面でのやわらかな和事味、孝太郎さんの豪華ながらも清冽な美しさと、源氏方が相手でも臆することのない気丈さが特に印象に残っています。

また、海老蔵さんの同世代や後輩の世代も大活躍。
亀ちゃんこと亀三郎さんは、昨年に単独上演された「鎌髭」に出演していて、その時よりもリラックスした雰囲気が漂い、自由闊達な演技。
お若い廣松さんは生では初めて見ましたが、清潔感があって素朴な可愛らしさがありますね。
そして、坂東薪車さん改め市川道行さん。再び歌舞伎の舞台を踏むことになりましたが、けっこう大きな役でびっくり!
海老蔵さんが戦力として期待していることがうかがえます。
実力のある人ですので、今度はこじれることなく活躍していってほしいなと思います。
また、出演者の中で最年少の子役・吉岡竜輝くん(弟の翔馬くんとのダブルキャスト)。歌舞伎の舞台によく出ているのでもうすっかりお馴染みですが、子どもの時期を脱してステキな美少年(女の子の役だったので舞台では美少女)になってました。声も可愛いというより綺麗ですね。

今回の演出の目玉ともいえるのは、上妻宏光さんの津軽三味線。
宝塚の「MAHOROBA」という演目で彼の津軽三味線を聴いたことがあるのですが、その時は録音でした。
今回初めて生で聴いて、その音量と迫力に感心。また同時に繊細さも感じました。
特にすごかったのは、クライマックスの牢破りの場面。
津軽三味線の音色、リズムをつけて踏み鳴らす役者たちの足音(名題下さんたちが大活躍でした)、舞台上の鮮やかな色彩までが渾然一体となり、ひとつの「合奏」を見ているような感覚に、血が湧き立つような興奮を覚えました(実はお昼ご飯を食べたばかりで、ちょっぴり眠気と戦っていたのですが、一気に目が覚めました)。
これこそが芝居の醍醐味、生の舞台の醍醐味ですね。
その後の大詰「解脱」は静かな美しさ。
清浄な心になった景清が天に召されるのですが、少しカーテンコールのような趣もあります。
舞台上には「三升席」という一幕見席が設けられています(役者さんを至近距離で見られるスゴイ席です!)。
照明のほとんどない真っ暗な舞台から始まるのですが、海老蔵さんが杖をつく音を大きく立てて三升席の人を驚かせたりするアドリブは面白かったです。

最近はブログが超有名になった海老蔵さんですが、そのブログも含めて歌舞伎の普及に努める姿勢、「お客様を楽しませたい」という姿勢が、このような華やかな舞台になっているのを実感しました。
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