三浦しをん「仏果を得ず」
この間のブログでちょっと書いた「仏果を得ず」の感想です。

読書といえば歴史小説や歴史関係のエッセイばかり読んでいる私にとっては、久々の現代小説。
しかし、物語の中身は文楽に生きる青年の話。なので、現代といってもまあ半分江戸時代感覚で手に取ってみました(笑)。
文楽の太夫であること以外は普通の兄ちゃんである主人公・健がいろいろ回り道して文楽の中の人物への共感を深めていく姿。「どこの世界も、いつの時代も変わらんなあ」と思えるような、現代の文楽の世界や人間関係。どうも一筋縄ではいかない健の恋。そして、健や師匠・銀太夫をはじめ、文楽を愛しすぎて「文楽の鬼」となっている男たちの、熱く厳しいながらもどこか楽しげな様子。
それらが綯い交ぜになって流れていく物語は、もっちゃりとした大阪弁と相まって、本人たちにはさぞ深刻であろうシーンでも、どこかおかしく、思わず笑ってしまうような明るさにあふれています。
「仏果を得ず」というのは、悟りを開かないというような意味なのですが、それは、人間らしく迷い、悩み、ふらふらする文楽の中の人物たちの姿であり、「変に悟ったりせんと、死ぬまで文楽の世界でもがきながら戦い抜くでぇ~」という「文楽の鬼」たちの朗らかな宣言なのでしょう。
「皆さん迷いなはれ、悩みなはれ、それが生きてるっちゅうことですわ」…というような、はるか昔の浄瑠璃作者たちの笑い声まで聞こえてきそうな物語でした。
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