七色の未来を描け! 南座「三月花形歌舞伎」
ちょっと時間軸が前後してしまいますが、9日に南座の「三月花形歌舞伎」を昼夜通しで見てきました。
メインの7人は平均年齢23歳という若さ!
関西で若手がこんなに集結するのは、一昨年の松竹座以来でしょうか。
しかもあの時は「メインの愛之助さんと若手たち(愛之助さんもまあ、まだじゅうぶん若手だけどね)」という感じだったのですが、今回は7人の若手たちがメインを張る興行です。
実力的にはまだまだこれからの7人ですが、この舞台に賭ける熱い熱い思いを感じました。

まずは「矢の根」。
歌昇さんの曽我五郎、もう少し声がよかったらいいなあ…とは思いましたが、 ほとばしる若い情熱に感動!
馬を走らせるために「ハイッ!」とかける声にも気合がみなぎっています。
隼人さんの大薩摩文太夫はホントに一瞬しか出てこないんですが(笑)、久々に舞台で見て、大人になったな~と思いました。行儀よく背筋を伸ばした楷書の美を感じます。
種之助さんの十郎は、お兄ちゃんの歌昇さんの兄という、兄弟逆転の配役。
ふだんから弟をたいへん可愛がっている歌昇さんですので、十郎を助けに行こうとする五郎の気持ちは痛いくらい分かるんだろうなぁ…(笑)。
種ちゃんは兄というにはかわいらしすぎて、ちょっと幼く見えるんですが、ニンには合っているし、役の性根を掴めそうな片鱗は感じられるので、これから何度も演じて深めていって欲しいと思いました。
馬をやった人の名前は番付に書かれていないのですが、大和屋の八大さんと大和さんかな?

続いては「鳴神」。
通し狂言の「鳴神不動北山櫻」も含めて、何度も上演されている演目ですが、私はどうしても観劇するタイミングが合わず、今回初めて見ました。
いや~、Hだ(笑)。聞きしに勝るセクスィ~さ。
でも、からりと明るく、艶話をことさら隠蔽しない時代のお話の良さを感じました(逆に今の世の中は、必要以上にそういうのを隠そうとするから、陰にこもっていやらしくなるんだろうな)。
松也さんの鳴神上人は、見た目も実際の年齢も若いので、「あーあ、あんな若い身空で何をすねて籠ってるんだよ」と言いたくなる感じ(笑)。若さゆえに「女の色香に惑っても仕方ないよねえ」と思えるリアリティがあります。
演技のほうはちょっと硬いかなとは思いましたが、怒りを表すところは上手かったと思います。
柱巻きの見得の時も足の親指がちゃんと上を向いてました!
それを見て「しまった!前の幕で歌昇くんの足の指見るの忘れた!」と焦りましたが、足の親指ばかり注目していて全体を見ないのでは本末転倒ですので、これでいいのかも…。
雲の絶間姫を演じた米吉さんは、初々しさや可愛さだけではなく、押し出しのよさもあり、華がありますね。
そして、仕方話の上手さが光りました。
歌舞伎に限らず、若手がたくさん喋る役を演じるとぎこちなくなってしまいがちなんですが、米吉さんのしゃべりは実に滑らか。しかも、観客をグッとお芝居の中に引き込む力がありました。
あと、胸を触ってしまった鳴神上人の手を、離さないようにムギュー!と押さえつけるのが面白かった(笑)。
白雲坊(又之助さん)と黒雲坊(國矢さん)、可愛かった~。
用事を言いつけられると、めんどくさがって「えーーー」と言うところが特に可愛いです(笑)。

昼の部の切は「流星」。
おもしろかった~!
25歳にして坂東流のお家芸をつとめることになった巳之助さん。汗びっしょりの熱演ですが、流星のコミカルな様子は軽やかでした。そして、意外にも、おばあちゃん雷の役が一番上手かった!
先日、父・三津五郎さんがこの世を去ってしまわれましたが、きっと「俺がいなくてもガンバレ!」と応援してくれていることでしょう。
ダメ出しもしてくれてるだろうけど、聞こえないのが悲しいなあ…。
牽牛(隼人さん)と織女(右近さん)は、なんという美男美女!
今回は右近さんのお父さん・清元延寿太夫さんが浄瑠璃をつとめられていて、親子共演でもありました。
隼人さんは、「矢の根」の時よりもちょっとあどけない感じ。
流星が話しているうちに夜が明けそうになってしまうんですが、「織姫と彦星は年に一度しか会えないんだから、長々と話して邪魔したら可哀想じゃん!」と思わずツッコミを入れてしまいました(笑)。

夜の部の狂言は二つ。
初めは「弁天娘女男白浪」。
松也さん、なんとも美しい娘姿!(ホントは女性に変装した弁天小僧だけどね。)
松也さんの女形は久しぶりに見ましたが、ほんとにきれいだったなー。
立役も女形もできる人なので、もっと女形もやればいいのにと思いました(興行の関係で、やろうと思ってもできるもんではないんだろうけど)。
正体を表してからは、芝居のしかたが菊五郎さんそっくり!(笑)。「ああ~」と伸びをする腕の形までそっくり!
今はまだ、教えてもらったとおり演じることが大切な時期なのでしょう。演技自体は悪くはなかったけど。
巳之助さんの南郷力丸は江戸前の雰囲気がすばらしい。さすが菊五郎劇団!
声もよく通るし、役と近い年頃ならではの等身大の感じもよかったです。
重要な役である浜松屋幸兵衛は嵐橘三郎さん。上方の役者さんがこうやって舞台を締めているのは嬉しい限りです。
播磨屋兄弟は、兄の歌昇さんが日本駄右衛門、弟の種之助さんが鳶頭清次。
自分よりもはるかに年上の大人の役でかなり難しかったと思いますが、役の雰囲気を出そうとしているところが感じられました。
(余談ですが、なんでみんなこの兄弟を「うたたね兄弟」というのか?種ちゃんの初舞台のうたたねエピソードからか?と思ってたんですが、名前の最初の文字を取って「歌」「種」=うたたねなんですね!気付くの遅すぎ?)
米吉さんの若旦那は、おっとりとした風情があり、いつか玉島磯之丞のような、つっころばしの二枚目を見たいと思いました。
稲瀬川勢揃いの場は、5人それぞれ、キラキラした若さが眩しいほど。
右近さん演じる赤星の美青年ぶり、そして巳之助さんのセリフの明晰さが特に印象的。
隼人さんは口跡がよくなってきましたね。

大喜利は「闇梅百物語」。
めちゃめちゃ楽しかったです!
この演目を見るのは初めてだったのですが、見ているうちに「あ、これ、『こんぴら歌舞伎』のドキュメントでやってた!」と思い出しました。
最初は、百物語の最後の蝋燭を消しに行かされる大名家の女小姓・白梅がのっぺらぼうに!という怪談。
右近さんの女小姓姿が美しく、「春興鏡獅子」が見たいなと思いました(追記:夏に自主公演でやるそうです!)。
また、「人の不幸は蜜の味~」という奥女中たちのセリフが面白かったです。
そして、そこから妖怪変化が大集合!
歌昇さんの狸かわいい~!ふわふわです。ナデナデしたいくらい(笑)。
歌昇さんの父・又五郎さんは何度もこの役をやっていますが(昔、まだ幼かった孝太郎さんが「狸のお兄ちゃん」と呼んでいたくらい(笑))、歌昇さんもこれから何度もやっていくのかな。
隼人さん、河童の手ってああいう感じなんですね(笑)。
この二人(二匹?)が相撲まで取るんだから、もう大笑いでした。
あっ!そういえば某カード会社のキャラクターってタヌキとカッパですよね。この組み合わせって何か意味があるんだろうか?
傘一本足の巳之助さん、重心のとりにくい一本足、しかも下駄が一本歯(!)という究極のケンケン状態での踊りですが、きびきびして上手かった。化粧もなんだか可愛いですね。
今回はホント、昼夜ともにみっくんの実力の高さを感じることができました!
うって変わって美しい妖怪(?)たち。
吉原の振袖新造と花魁の幽霊が登場します。
米吉さんが花道からせり上がったときに、あまりの愛らしさにジワが起こりました。
踊っている米吉さんは、おそらく生では初めて見ますが、若いのになかなかこなれた感じで、柔らかな雰囲気がいいですね。
そういえば、米吉さんを最初に見たのも新造だったな~。
米吉さんが可憐な娘ならば、雪女郎の右近さんは妖艶な美女!雪のような儚さが素敵でした。
さっきは「鏡獅子」が見たいと思いましたが、ここでは「鷺娘」が見たいなあ…なんて思ったりして(笑)。
とにかく、右近さんの舞踊が見たいんですよね。
種之助さんは骸骨・読売・狐の三変化です。
こんなにも種ちゃんの踊りが見られるなんて、もう、感動!
とくに読売の闊達さが目を引きます。まだ若いのに、「かっぽれ」が粋だったな~。
あ、そうそう。妖怪ものということで、菊三呂さんが「近頃は妖怪ウオッチなるものが流行っておりまする」と言ってました(笑)。そういえば、この前、「寿三升景清」で見た時は「ダメよ~ダメダメ」って言ってたな(笑)。
最後はパーッと明るく華やか。
若手が華やかな衣装で美しく出てくると、もうそれだけでこちらも元気が出るような気がします。
これからも、彼らが成長していく様子、言うならば「七色の未来」を見つめていきたいと思います!
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