夏芝居
浪花の夏の風物詩、松竹座の「七月大歌舞伎」昼の部に行ってきました。
今年の昼の部は、「鈴ヶ森」「雷船頭」「ぢいさんばあさん」という、肩の凝らない、歌舞伎の楽しさを満喫できる三つの演目が並びました。

まず最初の「鈴ヶ森」は「お若えの、お待ちなせえやし」の台詞で有名な狂言ですが、今回初めて生で見ました(映像では、数年前に勘三郎さんと吉右衛門さんがされたのを見ました)。
孝太郎さんの白井権八は、若者のみずみずしさが印象的。
美青年というよりは少し女っぽい顔立ちですが(まあ、ふだんは女形だからね…)、表情をそんなに変えず淡々と、楽々と人を斬る姿に、「この若い子が、こんなことを…」というような凄みがあります。
雲助たちがバッタバッタと斬られていって、手や足や顔が取れちゃうところは、こわいけど、おかしい~!
そして、動きがいい!こういった演目は、動ける若手がいないと成り立たないですね。
錦之助さんの幡随院長兵衛は、駕籠の筵をパッ!と上げて姿を現すところがかっこいい!
つっころばしの二枚目がニンの人ですが、こういうのもいいな。
台詞の中に「高麗屋の長兵衛」とか「播磨屋の兄貴」など、錦之助さんがこの役を習ったであろう方々の名前が出てきたんですが、これはやっぱり人によって違うんですよね。他の人のも聞いてみたいです。

お次は、いかにも夏らしい「雷船頭」。
これは去年の歌舞伎鑑賞教室で見たので二度目です。
幕開きから明るく涼しげな雰囲気が漂っていて、見ているだけで楽しくなります。
吉弥さんの女船頭も美しかったけど、時蔵さんも美しいな~。江戸前の粋さがいいですね。
国矢さんの雷様、雲の上に戻ろうとジャンプしたり、隙あらばお酒を飲もうとしたり、必死さが可愛い!
女船頭の踊りを真似するところもすごくほほえましいですね。
楽しくて楽しくて、あっという間でした。

そして、昼の部最後の演目「ぢいさんばあさん」。
こちらも二度目の観劇です(最初に見たのは一昨年の南座の顔見世)。
いや~泣いた!笑いながら泣いた!
とくに、仁左衛門さん(人間国宝認定、おめでとうございます!)扮する伊織が37年ぶりに家に帰ることができて、嬉しさのあまり家の中を走り回りながら障子や戸を開け閉めするところ。
すごくおかしくて可愛いんだけど、伊織の気持ちが直に伝わってきて思わず涙があふれました。
それは、時蔵さんが演じる、るんにも言えることで、再会した場面では、年を取ってしまったがゆえのおかしみがありつつも、「この人は、夫が他家にお預けになったり、子どもを亡くしたりという辛いことを懸命に耐えながら(しかも一人で)、自分らしく生きてきたのだな…」と感じ、ジーンときました。
そして、歌六さん、上手すぎ!!
先月の歌舞伎座も感動しましたが、今回も良かった。
下嶋は性格的に悪いところはあるとはいえ、金を貸してあげた相手に「好かない」と言われ、その男のせいで死んでしまうんですから、ある意味気の毒な人間ですね。
本当は、彼は伊織と友達になりたかったんだろうねぇ…。
伊織の友人役は「えっ、こんな豪華でいいの?」と問い直したくなる面々が並び、演技の面白さも印象的(ただ、由次郎さんがかなり痩せていて、ちょっと心配になってしまいました…)。
るんの弟、久右衛門は錦之助さん。この人はいつまでも若々しいな~。拵えをすると息子の隼人さんとあまり変わらないかも(笑)。
でも、お芝居に深みというか「そうそう、こういう人いるよね」と思えるものがあるのは、さすがに修行のなせる業だと思います。
現実でも錦之助さんの息子、役でも息子という隼人さん(ついでに言うと、錦之助さんのきょうだいが時蔵さんなので、これも役と同じ)の久弥と、その妻きくの米吉さんのカップルは、微笑ましくて可愛らしいです。
米吉さん、さすがの「可愛すぎる女形」ぶり!奥さんの役でも可愛いなぁ~。
隼人さんの「はははっ」と笑う屈託のない若者ぶりも可愛い。
しかも、ふたりとも心優しくて、伊織にとっていい甥夫婦だな~。

それにしても、仁左衛門さんの「ぢいさん」ぶりがいかにもしっくりきていて、(失礼ながら)そっちのほうの年に近くなったんだなぁ…と思っちゃいました。
なんか、永遠に伊左衛門や与三郎と同じような歳のままだと錯覚してしまいがちなんですが(笑)、やっぱりそうではないんですよね。
でも、それは決して悪いことではありません。
歳を重ねてしみじみした趣が深まり、また、芸も深さを増し、何だか、ますますこれからが楽しみになってきました。
さて、次はどんな仁左衛門さんが見られるのでしょう。
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