歌舞伎NEXT「阿弖流為」
ずっと楽しみにしていた歌舞伎NEXT「阿弖流為」を見てきました。
めっちゃ感動した~!
蝦夷と大和、人と人、そして人と神、その関わり合いにどんな結末が待っているのか、最後まで息をもつかせぬ展開にドキドキ。
そして、戦とは何か?平和とは何か?友情とは何か?誇りとは何か?それを問いかけるかのような作品だったと思います。
大和の人間は「蝦夷は鬼だ」と言いますが、都に隠れ住んでいた阿弖流為とすれ違っても、誰も彼が蝦夷だとは気付かない。
住むところや文化が違うというだけで相手を蔑むことがいかに無意味か、ごく自然に理解できた気がします。

江戸時代からの伝統的な歌舞伎の登場人物も、心に持っている思いはやたら濃いですが、この「阿弖流為」はまた違う方向に思いが濃いと思います。
江戸時代の歌舞伎は主に「義」と「情」にかける思いが濃く、この作品ではもっと現代的な「人間としての生き方」に対する思いが濃い。
そして、どっちであっても、その濃さに魅せられる。そこが歌舞伎だなあと感じました。

染五郎さんの阿弖流為、勘九郎さんの坂上田村麻呂、ホントにカッコイイ!!
蝦夷と大和の対立が激化し、大和がどんな酷い手を用いても、また、都に連れてこられた阿弖流為が大暴れしても、それぞれの武人としての清々しさ(なんだか、「我が愛は山の彼方に」の秀民とチャムガを思い出しました)と二人の清らかな友情は変わらない。
それだからこそ、田村麻呂が星空を見上げ、その片隅に阿弖流為と鈴鹿が微笑んでいるラストシーンが切なくも美しく、まるで心が洗われるようでした。
七之助さんの立烏帽子と鈴鹿(最初のあたりは立烏帽子=鈴鹿だったはずなのに、途中からもう一人鈴鹿が!一瞬頭が混乱しましたが、ここはうまいこと作ってありますね)。正反対の役で、ギャップが面白かった。
しかし、それだけでは終わらない!七之助さんはスケールが大きく、殊に最後のシーンは、女性ではない女形だからこそ出せる魅力があったと思います。
阿弖流為とは対照的な蛮甲(片岡亀蔵さん)の姿にも、深い感慨がありました。
蛮甲にとっての戦いは、勝ち負けではなく、どうやって生き永らえるか。
そのためには大和についたり、蝦夷に戻ったり、また大和に行ったり…。
卑怯だ、変節だと言うのは簡単ですが、意地や誇りだけでは戦の時代を生き延びられない…そう思わざるを得なくなった彼の境遇に哀しみを感じました。
彌十郎さんの藤原稀継。この「阿弖流為」のベースとなった劇団☆新感線の「アテルイ」には登場しない、今回のオリジナルだそうです。
えー!マジで?!この人が行動しなきゃ話が成り立たないほど重要なんですが。
最初は立派な人格者そのものなのに、途中でいきなり本性を見せます。
周囲から「えっ!」という声が聞こえてくるほどの変貌ぶりに私もオドロキやはり、彌十郎さんはさすがです。
また、舞台全体を包み込むかのような存在感に、先立った勘三郎さん・三津五郎さんの分も若手たちを見守っていくという意気込みを感じました。
蝦夷の母礼族の巫女・阿毛斗の新悟さんが美しい。
戦うシーンについて、番付には「ちゃんと女性が戦っているように見えるか」と心配そうなご本人のコメントが載っていたんですが、体の動かし方や姿勢などに、女性のしなやかさと凛とした雰囲気が感じられました。  
飛連通(大谷廣太郎さん)と翔連通(中村鶴松さん)、途中で田村麻呂を裏切ったのに、後でまたちゃんと味方についていて「?」となったんですが、あの裏切りは稀継に騙されてやったってことなのかな?
それにしても鶴松くん、初めて見た時はまだ中学1年生くらいだったんですが、すっかり大人になって精悍になりましたね~。
廣太郎さんは何気ないところでも刀の構え方がかっこいいです。
「あらしのよるに」に引き続き、二カ月連続で新作歌舞伎に登場されている萬次郎さんと橘太郎さん。
橘太郎さんの佐渡馬黒縄はものすごく悪役然とした化粧で出てくるのですが、実態は意外と小悪党(笑)。そこがなかなか面白かったです。
また、ご本人もそういったキャラクターを楽しんで工夫しているように見えました。
萬次郎さんの御霊御前、さすが!!
国のためなら弟さえも犠牲にするという、ブッ飛んだことも、萬次郎さんの演技力なら説得力があります。
やはり萬次郎さんのようなベテランが入るとリアリティが断然増してきますね。
そして、何とも凄絶な美しさ!女形ってここまでできるんだ、スゴイ!

そうそう、開演前、このようなものが客席に置かれていました。
aterui1
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このライトで、最後には客席全員で星空になります!
ラストに田村麻呂が客席の星空を眺めているのを感じて、まるでお芝居の中に入り込んでしまったような、劇場全体が一つの世界になったような、不思議な感覚にとらわれました。

先月の南座の「あらしのよるに」、そしてこの「阿弖流為」と、立て続けに新しく創造された歌舞伎を見ましたが、やはり古典と新作は断絶しているものではなく、続いているものなんだと実感。
花形世代の意欲は、一時のあだ花ではなく、ちゃんと歌舞伎の未来につながっていく気がします。
そして、猿翁さんが作られたスーパー歌舞伎の影響の大きさも感じました(スーパー歌舞伎もまた、一時のあだ花ではなく、確実に歌舞伎の歴史の一部、歌舞伎の血肉になっていますね)。
もちろん、表現はそれぞれ違っているところがありますが、幼い日にスーパー歌舞伎に衝撃を受けた花形世代が、それを自分の糧とし、更に新しいものに進化させていく。今、ちょうどその真っ最中なんだなと思います。
そして、それを目の当たりにする楽しさは格別です!
ちょうど、四代目猿之助さんのスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」も幕を開けました。
花形世代が競い合い、さらに進化した歌舞伎が生まれる瞬間を、これからもどんどん楽しんでいきたいと思います。

P・S 開演前にも休憩中にも流れている賑やかなお囃子。「ん?祭り?」と思ってたら、お芝居のラストにお囃子の方々とねぶたの山車(本物ではなくセットですが)も登場しました。
ねぶたはきっと、儚く散った蝦夷たちへの鎮魂の祭りなのでしょう。
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