當る申歳 吉例顔見世興行
毎年恒例、南座の顔見世興行に今年も行ってきました。
今年は鴈治郎さんの襲名披露です。
贈られた竹馬もこんなにたくさん!
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竹馬はこの横にも並べてあるのですが、ここの一角は「がんじろはん」へのものばかり!お祝いムードが伝わってきます。
もちろん、「まねき」もバッチリ写真に収めてきました。
こちらは上方の俳優さんのまねき。
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藤十郎さんのまねきの横に、翫雀改め鴈治郎さんのまねきがかかっています。
弟の扇雀さん、ご子息の壱太郎さんのまねきも(さあ、どこにあるでしょう。見つけてください)。
また、今年、新たに名題に昇格された、中村扇一朗改め中村かなめさん、同じく、片岡たか志改め片岡孝志さん、新たに部屋子となった中村未輝さん、片岡千太郎さんのまねきも初めて上がって、とても晴れやかな雰囲気。
こちらは東京の俳優陣。
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すでに披露は済んでいるものの、名題昇進後、初の顔見世出演となる市川蔦之助さん、そして海老蔵さんの部屋子・市川福之助さん(福太郎さんの弟さん)、の初めてのまねきが隣同士に並んでいます。

去年観に行った日は先斗町の総見だったんですが、今年は祇園東の総見でした。
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一階の桟敷席に舞妓さん・芸妓さんがいっぱい!すごくきれいです。
でも、あの格好でずーっと観劇し続けるのは大変そうだなあ(笑)。

最初は「碁盤太平記」。
近松門左衛門の原作を改作し、今年4月歌舞伎座で上演したものに、さらに手を入れて上演されました。
大石内蔵助に扇雀さん、奴岡平に愛之助さん、りくに孝太郎さん、主税に壱太郎さん。
上置きに東蔵さん(内蔵助の母・千寿)をむかえ、中堅より下の上方オールスター総出演といったところでしょうか。
例年、顔見世の最初は新歌舞伎か祝祭的な演目が多いので、こういう「忠臣蔵」的な演目は珍しいですね。
この演目が「玩辞楼十二曲」のひとつで、しかも12月だからということもあるのでしょうか。
扇雀さんは今年の初めに「曽根崎心中」で九平次を演じていて、立役としての色気に感心したのですが、放蕩ぶりを見せる内蔵助にもその色気があり、また、本心を見せるところには武士としての気概と、人としての哀しみがありました。
息子の主税はまだ若く、母や祖母との別れに涙を見せるのですが、主税に対して「覚悟を持て」と言わんばかりの内蔵助も、母や妻と別れる(しかも今生の別れになる)のは内心さぞ辛かろうと思いました。
そして、その気持ちを受け止める母と妻。
内蔵助は彼女らを巻き込まないために離縁をしたり、わざと勘当をされようとするのですが、やはり何も告げずに江戸へ行くことはしのびがたく、障子に映る二人の影に「影の人」と呼びかけて他人のふりをし、さらに顔が見えぬように明かりを消して別れます。
手探りで息子を探し当て、物も言わず蓑をかけてあげる母の姿に思わず涙…。
さらに、最後にりくの手をグッと握り、何も言わずに出て行く内蔵助の姿に、この夫婦の絆のたしかさを感じました。
孝太郎さんは武家の女の凛としたところを見せて好演。この方はこういう役が似合いますね~。
奴岡平の愛之助さん、上方の味わいが濃厚になってきました。奴さんの身のこなしがとても似合っています。
最後に自分の正体と本心とを晒しますが、その切なさも良かったです。
それにしても、こういう上方俳優ぞろいの顔ぶれで見ると、上方歌舞伎とはどういう雰囲気のものかがよく分かる気がします。
来年も「ザ・上方」な歌舞伎をたくさん見たいと思いました。

お次は「吉野山」。
お馴染みの演目ですが、あの満開の桜を描いた書割には、何物にも代えがたい華やぎがあります。
静御前の藤十郎さん、少し痩せられたのでは?とちょっと心配しましたが、可憐で気品あふれる姿はいつも以上に若々しく見えました。
踊りはさすがに前回のような勢いはなくなりましたが、その分、一つ一つの動きに品があったと思います。
狐忠信は、演じる人によって雰囲気がかなり変わりますが、過去に観た又五郎さん・猿之助さんの忠信は得意の踊りを生かした、どこかエッジの効いた忠信、それに対して、今回の橋之助さんは春風駘蕩とした雰囲気で、踊りが特別うまいわけではありませんが(でもさすがに下手ということはありません)、桜が満開の背景にいかにも似つかわしい忠信でした。
それに加えて、まるで錦絵から抜け出してきたような立派な風貌。来年の芝翫襲名がますます楽しみになりました。

つづく鴈治郎さんの襲名披露狂言は「河庄」。成駒家の家の芸ですね。
妻子ある身でありながら、ふらふらと遊女・小春に入れあげてしまう治兵衛は情けなく、愚かで哀しい。でも、一つ確かなのは、彼が必死だということ。
治兵衛ばかりでなく、彼の周りにいる人もみな必死です。
治兵衛は小春と妻・おさんの間で必死になって迷い、兄の孫右衛門は侍の姿に身をやつしてでも弟を真人間にしようと必死になり、小春は治兵衛とおさんのために必死で身を引こうとする。
そして、ここには出てこないおさんも、必死の思いで小春に手紙を出す。
みんな必死だから、情けなくも切ないんですね。
そういうところを冷静に描く上方和事の特徴を感じました。
また、小春という役はとても難しい役なのではないかと思いました。
治兵衛の罵詈雑言をじっと耐えながら聞き、台詞もなく顔をうつむけていながら、様々な気持ちを見せていかねばならない。
畳の上に突っ伏して耐える時蔵さんの後ろ姿から、仕草に思いを込め、それを醸し出すことの難しさと大切さを感じました。
こういったせっぱつまった物語の中で、秀太郎さんのお庄は、話の筋にはそんなに絡まないのですが、上方の世界観を体現する一服の清涼剤といったところでしょうか。
とにかく、台詞がめちゃめちゃ自然!江戸時代こんな人いそうだよね(笑)。やっぱり上手いなあ、秀太郎さん。
愛之助さんと亀鶴さんのコンビは息がぴったりで、半道敵みたいな、小悪党な雰囲気が面白かったな。
観ているうちにある願望がひとつ…。
もちろん、梅玉さんも時蔵さんもそれぞれよかったんですが、こういうベタベタに上方な演目は、一度くらいはオール上方キャストで見てみたいなと思いました。

切は「土蜘」。
松羽目もののシンプルな舞台美術ながら、蜘蛛の糸をパッと投げるところや立ち回りが印象的で、昼の部を華やかに締めくくったと思います。
それにしても、仁左衛門さんと梅玉さんの立ち回りや、左團次さんの平井保昌を見ると、つくづく歌舞伎役者に年は関係ないんだと思います。みんな若々しくてお元気ですし。
進之介さんをはじめとする頼光の四天王たち、扇雀さん・橋之助さん・愛之助さんの番卒たち、また立ち回りで花道でトンボを返った新次さんはじめ軍兵たちもキビキビしていて気持ちの良い動き。
梅枝さんは成長著しく、巫女榊の可憐な表情が印象的でした。

例年、顔見世は時間が長く、演目も多いのですが、今回は時間の長さをあまり感じませんでした。
おもしろかったし、私もだんだん顔見世に慣れてきたのでしょうか?(笑)
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