壽初春大歌舞伎
文楽の次の観劇は歌舞伎でした。
「壽初春大歌舞伎」を昼夜通しで見たので、一日中松竹座におりました。
曽我物や鶴亀など、お正月らしさや襲名らしさを感じる演目、新・芝翫さんにぴったりの時代物、大阪ならではの上方の狂言など、いろんな種類のお芝居・舞踊が見られて楽しかったな。
古典の演目が中心で、特に昼の部は全部の演目が浅葱幕から始まっていてちょっと面白かったです(笑)。

昼の部の最初の演目「吉例寿曽我」は、通称「雪の対面」と呼ばれるもので、秀太郎さんのブログによると、なんと昭和16年以来75年ぶりの上演とのこと。
「寿曾我対面」に出てくる工藤佑経の代わりに、奥方の梛の葉が出てきます。
また、曽我兄弟は一幡・箱王と名乗る子ども時代となっています(ただ、工藤が巻狩りの総奉行に任じられたという話が出てくるので、時系列がちょっと歪んでいます。ま、それも「対面」にのっとって作られた古典の味わいなんでしょうね)。
主要なキャストのほか、舞台に居並んでいるのは、「対面」では大名(男性)なんですが、今回は奥方の側仕えの女性たちばかり。女奴と腰元が互いに当てこすりを言い合い「オホホホホ…」って笑うのも、趣が変わって面白かったな。
ちょっと偉いさんの「局」を演じる新悟さんと梅花さんも品があって美しい。
また、近江小藤太と八幡三郎は、「対面」では動きやすいように袴が半ズボン状態になってるんですが、今回は雪景色ということで寒々しく見えないようにするためか、普通の袴になっていました。
さて、襲名の成駒屋三兄弟ですが、三男の歌之助さんが兄の一幡(十郎)、次男の福之助さんが弟の箱王(五郎)。お兄ちゃんと弟が逆です。そういえば、播磨屋の歌昇さんと種之助さん兄弟もそうでしたね。
歌之助さんの声が祖父の先代芝翫さんとそっくりで驚いた!
兄弟の中で一番おじいさんに似ていると常々思ってましたが、声まで似ているんですね~。
まだ15歳で、立役と女形、どっちの道に進むのかは分からないんですが、色気のある二枚目や女形が似合いそうですね。
福之助さんは隈取が似合い、血気盛んな様子も役にぴったりだなと思いました。
箱王は荒事なのでとても目立つんですが、一幡と並んだ時に着物の着方、中に着る着肉、帯の結び方が全部違っているのがよく分かります。すべて大きく見せるような工夫がされているんですね。
小林朝比奈の橋之助さんはまだ21歳になったばかりですが、蓑を背負って花道を駆け抜けてくる様子に大人の風情があり、驚きました。いつか「対面」でも朝比奈が見られるかなあ。
梛の葉は秀太郎さん。何よりも品格があり、身分の高い奥方の威厳や大きさが伝わってきます。
見る前、梛の葉は夫が討たれてしまうかもしれないのに辛くないのかな?と思ったんですが、巻狩りの手形を渡すところで、夫婦で覚悟を共有している様子が見て取れました。
武家の奥方という立場はとても辛いものだと思いますが、覚悟を持っている様子はさっぱりと潔く、そこが品格につながっている気がしました。

「梶原平三誉石切」は、文楽を原作としていて、奇想天外なところもありますが、とても好きな演目です。
梶原平三の優しさと爽やかさ(このお話の中で私がもっとも好きなところです)がとてもよく伝わってきて、最後にはスッキリとした気分になれます。
またこういうところが芝翫さんにぴったりなんだなあ。
スケールが大きく、心優しく、颯爽とした良い男ぶりでした。
東蔵さんの六郎太夫の台詞回しに隠れた情愛がこもっているのがとても良かった。
ストーリーを知っているからかもしれませんが、家に折紙(鑑定書)を取りに行くよう娘・梢に言う台詞に思わずウルッときてしまいました。
その梢を演じる児太郎さんは化粧のピンク色がちょっと濃いように思いましたが、自分の夫が源氏方の侍であると思わず言いそうになってしまうところに、彼女の逸る気持ちを感じました。

「新口村」は、忠兵衛と孫右衛門を仁左衛門さんが二役で演じられますが、両方ともとても自然で無理がないところが良い。
孫右衛門が息子の忠兵衛に寄せる情愛の心にはいつも泣かされますが、今回は特に身近に感じられました。
そして、梅川を演じる孝太郎さんの充実ぶりが印象的。とくに匂いたつような色香がすばらしい。
遠見の忠兵衛を演じる千太郎さんはまだ10歳ながら大人顔負けの演技で、子役としてではなく「遠見」というのをちゃんと意識して演じていたように思います。
遠見の梅川を演じる子役さんも可愛かったなあ(この役はダブルキャストなんですが、二人とも女の子だそうです)。
松江さんと亀鶴さんは「雪の対面」に続くコンビ出演(笑)で、舞踊としてではなくお芝居の中の万歳と才造というのをきちんと出していたと思います。

夜の部の最初は「鶴亀」。
お正月にぴったりで、神々しい雰囲気です。
長唄の歌詞もおごそかで、すごくいいんですよね。
藤十郎さんの胸を借りて頑張っている三兄弟の引き締まった表情がよかった。
こうやって大御所と共演することはさぞかし若い人たちの励みになるんだろうなと思いました。
藤十郎さんの女帝は美しく高雅。さすがに様になりますね~。

そして、芝翫さん・橋之助さん・福之助さん・歌之助さんの襲名を祝う「口上」。
朝倉隆文氏の舞台美術が刺激的です!
口上の内容は皆さんわりと真面目だったように思いますが、彌十郎さんが芝翫さんの義兄・勘三郎さんの話をされた時に、ちょっと涙が…。
義理の兄弟ですが、まるで本当の兄弟のようにいつも舞台で共演していたなぁ…。勘三郎さん、弟と甥っ子たちのことをきっとどこかで見てくれているんだろうなぁ。
親子四人と同時に、芝喜松さん改め梅花さんの襲名・幹部昇進の披露も行われました。
こういう形での披露は珍しいような気がしますが、長年にわたって地道に頑張ってきたお弟子さんにスポットが当たるのは本当に嬉しいです。

夜の部での芝翫さんの襲名披露興行は「勧進帳」。
三人の子どものうち、橋之助さんとは昼の部の「石切梶原」で共演しましたが、ここでは三兄弟みんなと共演です。
親戚である魁春さんが、珍しく立役の義経で出演されています。
単に珍しいというだけではなく、さすがは魁春さんで、気品があってなかなか良かったな。
仁左衛門さんの富樫は、品格や大きさや人情を感じさせ、また、とても気持ちが理解できる富樫でした。
四天王が富樫に詰め寄ろうとするのを弁慶が押しとどめるところは、力いっぱいの橋之助さんの表情が印象的です。
芝居の終わり、幕外で感無量の思いを見せる弁慶に感動!
今まであんなに気丈に、豪快にふるまっていた弁慶が瞳を潤ませて客席を見つめるんですから、もう、泣きそうになってしまいました。

切は「雁のたより」。
やっぱりこれは面白いですね!コメディタッチですごく楽しいです。
この作品を作ったのは三世歌右衛門、俳名は芝翫。こういったところでもさりげなく襲名をお祝いしていますね。
鴈治郎さんの五郎七の可愛らしさ、飾らない気性がとてもいい。
なんと、恋ダンス(?!)まで見せてくれます(笑)。
それはさておき、お芝居をお芝居と感じさせないような自然な演技で魅了してくれました。
上方の世話物は普段話している言葉に近いので親近感があるんですよね。
司を演じる児太郎さんがとても美しく、お芝居も大人っぽくて驚きました。
孝太郎さん、ここでもすごく良かったなあ。
こういう花車方は伯父さんの秀太郎さんが抜群に上手いんですが、台詞回しや動きなどに秀太郎さんを彷彿とさせるものがあります。
亀鶴さんの若殿は、初日のNHKの映像よりもはんなりした感じが増して、セリフも聞き取りやすく、やっぱりこの人は上手いなと感心しました。
侍トリオが前回の上演より大幅に若返っている!これくらいの年齢が等身大なのかな。
松十郎さん、千次郎さん、かなめさん、若手の活躍にワクワクしました。
若手といえば、超若手の未輝さん、すっかり青年らしくなりましたね!これからが楽しみだ。
芝翫さんも若旦那の役で出演。
「あんた、いつ見てもエエ男やな~」と、何やら言いたげな(笑)鴈治郎さんに「よけいなこと言わんといてぇな」と言う芝翫さんがおかしい~!
あと、鴈治郎さん、また「あの鴈治郎という役者は芝居が終わったらまっすぐ家に帰りよる」って言ってました(笑)。ほんまかいな(笑)。
最後は五郎七のキリッとした面も見られて(家老役の彌十郎さんがいい味を出していました)、ハッピーエンドで気持ちよく帰れる作品でした。

P・S 前日まですっかり忘れてたんですが、この日はえべっさん(十日戎)でした。
開演前、松竹座の前にカワイイ福娘がいて、「あ!そういえば」と思ってたら、鴈治郎さんと孝太郎さんが宝恵駕籠に乗って来ました。あと、文枝師匠と山村友五郎さんと三倉茉奈ちゃんも。
戎橋の袂には舞台があって、文楽や大西ユカリさんやOSKのミニライブも上演されてました。
文楽の人形を持って歩いて来られるところにも遭遇できてラッキーでした。
来年も一月十日に観劇しようかな(笑)。
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