先斗町で顔見世
いまだに年末感ゼロなんですが(笑)、師走の風物詩・顔見世に行ってきました。
今年は南座の耐震工事のために、先斗町歌舞練場での開催です。
でも、これがものすごくよかった!
先斗町歌舞練場というところは戦前の雰囲気をよく残した劇場(昭和2年に建てられたそうです。ちなみに私の祖母と同じ年(笑))で、席数が500ちょっとだったり、今でも升席があったりして、劇場というより芝居小屋、観劇というより芝居見物と呼ぶにふさわしい、古き良き風情が味わえます。
かねてから昔の芝居小屋で芝居を見てみたいと思っていたのですが、今回、はからずもそれが叶いました。
そして、驚くべきは舞台と客席の近さ。
客席に入って、まずは自分の席を探して下ばかり見ていたのですが、座ろうとして正面を見てびっくり!
近い!2階席なのにこんなに近くていいのか!(笑)
(この近さで思い至ったのが、なぜか、スーパー歌舞伎の「ワンピース」。猿之助さんが客席に近いところで宙乗りをし、歌いながら観客を見つめていたのは、もしかしたら昔の劇場の距離感を再現しようとしていたのかも。司会者の方、評論家の方、どなたか、その点をインタビューしていただけないでしょうか)
しかも、私が見た日は宮川町の総見。
愛らしい舞妓さんや美しい芸妓さんがいっぱいで、戦前へのタイムスリップ感がさらにアップしていました。
12月の舞妓さんといえば、まねきの簪。
好きな役者さんに名前を書いてもらうのですが、紅で書かれた「雀右衛門」の文字が襲名の気分をより高めてくれます。

さて、顔見世の11時の部は「実盛物語」と「道行旅路嫁入」。
「実盛物語」は、映像では見たことがありますが、生で見るのは初めて。
それがこの歌舞練場で本当によかった。
近江のとある民家で起こる出来事というシチュエーション、哀切極まりない家族の物語、そして実盛の爽やかな人柄…。
ダイナミックかつ細やかに展開される人情の世界が、この劇場の大きさや舞台と客席の近さにぴったり。
初役で実盛を演じる愛之助さんは浮世絵から抜け出してきた感がますます強くなり、古風な色気が出ていたと思います。
瀬尾十郎を演じる亀鶴さん、うまいなあ!
身体能力の高さもさすがだし、何より迫力や情愛の示し方がとても良かった。
この役はきっと亀鶴さんの当たり役になっていくだろうと予感させてくれます。
娘を失うことになる松之助さん・扇之丞さんの老夫婦に涙、涙…。
命を落としてなお御台様(吉弥さん)の身を案じる小万(友右衛門さん)の健気さにも涙…。
また、子役ちゃんの愛らしいこと!この太郎吉は大役だなあ。
もう一度、こういう小さな劇場で見てみたいと思う演目でした。

「道行旅路嫁入」は何度も見ていますが、景色が次々と変わる楽しさと、踊りに込められた母娘の思いの切なさがいつも印象的。
結婚を前に起こった諸々の事情ゆえに不安でいっぱいの娘と、それを明るく優しく励ます母(まだ若い義理の母なので、どこか友達のような明るさも漂っている)。
藤十郎さんの戸無瀬からは、なんともいえないあたたかな風情が漂っています。
不安に駆られながらも、恋しい人と夫婦になることを夢見る可憐で健気な小浪の雀右衛門さん。
いくつになっても初々しい娘を演じられるところがさすがだなと思います。
二人とすれ違う奴は鴈治郎さん。
翫雀さんだった時にもこの役を見ましたが、その頃よりも飄々としたおかしみが増していて、よけいな力が入っていないところが素敵。
こういう役はすごく似合いますね。
また、終盤に行われた雀右衛門さんの襲名披露口上に感動。
藤十郎さんと雀右衛門さんの二人だけなんですが、芝居に引き続いて温かみが感じられ、先代の雀右衛門さんとたくさん共演された藤十郎さんだからこその、親代わりのような気持ちも感じることができました
雀右衛門さんも、この名前がだんだん板についてきたような風情があり、これからもますます期待できそうだと思いました。

三部制のお芝居は今回初めて見ましたが、上演時間は短いながらも充実した二つの演目を見ることができてなかなか良かったです。
もちろんこの時間配分に賛否両論はあると思いますが、顔見世はお手ごろな値段のチケットがなかなか取れないので、何年かに一度は三部制でもいいなーと思いました。
中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演
文楽を見た翌日は歌舞伎でした(このタイミングでしか見に行けなくてねぇ…。そしてまた疲労する)。
京都のロームシアターで「中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演」を観てきました。
久々の歌舞伎、楽しかった~。
ロームシアターは始めて行きましたが、外観は古いものの(けど、それがいい味を出している)、内装は大幅に改装されたらしく、きれいでトイレも多くて便利。
ただ、客席は飲食禁止なのに、ロビーには飲食できるような椅子等がほとんどなくて、物を置くところもないような場所で立って食べなければいけないのは不便ですね。

それでは、プログラムの順に紹介していきます。
まず最初は「歌舞伎塾」。
これは初の試みで、歌舞伎俳優の楽屋での準備の様子、立役・女形が出来上がるまでを舞台の上で見せ(分かりやすいようにスクリーンに映したりもします)、そこに歌舞伎の囃子方さんと若手役者さん、お客さんの有志による舞台での効果音の実演や勘九郎さん・七之助さんのトークや質問コーナーも盛り込んだもの。
トークと質問は例年「芸談」というコーナーで行っていたのですが、時間が短くて、なかなか質問に答えられなかったり、お客さんと触れ合えなかったりするのが残念ということで、準備の様子を見せながら、時間を多く取って行うことにしたそうです。
今年は南座の工事で歌舞伎鑑賞教室がなかったので、ここでこういった演目を見られてよかったな。
楽屋入りから本番の踊りまでの様子を見せるのは中村屋一門のいてうさん(そのまま「いてう」と読まずに「いちょう」と読みます)と鶴松さん。
ひげを剃ったり、びんつけ油で眉毛を消したりというところから、化粧をしたり衣装をつけたりするところまで(衣装部さんや手伝う他の役者さんも出てきます)、勘九郎さん・七之助さん、そして、司会を務める澤村國久さん(勘九郎さん・七之助さんの伯父である澤村藤十郎さんのご一門ですね)の楽しいトークを交えながら進んでいきます。
國久さんの話しかたは、ハキハキしたところやどこか愛嬌があるところなどが澤瀉屋の市川猿四郎さんに似ている気がします。
途中から中村屋最年長の小三郎さんも参加して、テンション高く(笑)、若々しく、見得の説明などをされていました。
また質問コーナーも行われ、先日行われた叔父の芝翫さん襲名披露公演で行われた口上でのこしらえについて(女形が多い七之助さんも立役で出ていたけれど、口上の時に立役と女形、どちらの姿で出るかはどうやって決めるのか?)や、嵐ファンでもある方から、嵐のライブの松本潤さんのソロの場面で使用された、亡き勘三郎さんをはじめとする中村屋一家の映像についての質問がありました。
まず、口上については、女形の姿での口上は六代目歌右衛門さんが考案したものだというお話が。
それまでは女形も口上の時は立役のこしらえで出ていたそうで、現在は、真女形(女形専門の役者)が立役の鬘で出るのはちょっと恥ずかしい…と思う場合に女形のこしらえで出演されるそうです。
もう一つ、口上について、中村屋と成田屋で60年に一度だけ行う口上があるとのこと。
そして、その60年に一度がもうすぐ来るそうです。(わーい!)
ちなみに、なぜ中村屋と成田屋かというと、江戸時代、中村屋は座頭(劇場主)、成田屋は看板役者だったからだそうです。
元々は二人で口上を行ったそうですが、勘九郎さんから「私たち(兄弟)は二人で一つですので、海老蔵さんと三人で」との言葉が。
とても弟思いで優しい勘九郎さんに思わず感動してしまいました。
また、嵐の松本さんのエピソードも感動的。
勘三郎さんだけではなく、蜷川幸雄さんなど、お世話になった方々の映像も出てきて、ライブ会場は涙・涙だったそうです。
もちろん、映像の使用にあたって勘九郎さん・七之助さんへの事前報告があり、松本さんが亡き勘三郎さんを今でも慕い、思い出してくれることにとても感謝しているとのことでした。
そして、いてうさんと鶴松さんの拵えが出来上がったところで、「草摺引」の踊りへ(その前に衣装や化粧についても色々と解説があり、分かりやすかったです)。
舞鶴を演じる鶴松さん、立派になったな~!
あの小さかった子役さんがこんなに素敵な女形の姿を披露してくれて感無量でした。
役としても、女武者のキリリとした風情にあふれていて良かったです。
いてうさんの曾我五郎は、持ち味である闊達さが生かされ、踊りもきびきびとしていて、スカッとした雰囲気があります。
そしてやっぱり、師匠の勘三郎さんの踊りを思わせるようなところがあって、ちょっと鼻の奥がツンとなってしまったなぁ…。

二部と三部は七之助さん、次いで勘九郎さんの踊り。
七之助さんは「汐汲」、勘九郎さんは「女伊達」をそれぞれ披露。
「汐汲」は、玉三郎さんと七之助さんが踊った「二人汐汲」は見たことがありますが、単独なのは初めて。
改めて、こういう踊りだったのかと認識しました。
一人で踊ると、切なさや思いを込めた踊りだというのがよりよく分かりますね。
後半は三段の傘を使った華やかな踊り。
愛した人をしのぶ海女の心情を踊る舞踊がこういう華やかな形に変化していくのも、歌舞伎舞踊の醍醐味だなと思いました。
「女伊達」は、江戸の吉原の桜の頃を背景にした、華やかで楽しい、大好きな舞踊です。
松竹座で片岡孝太郎さんたちが踊ったのを観ましたが、またちょっと雰囲気が違うようにも感じました。
勘九郎さんの女形が色っぽくてオドロキ!
立っているだけでも女の感じが出ていると思います。
男たちにふっかけられた喧嘩をあしらう振りがお洒落で楽しく、もっと見たいと思ったくらいでした。。
「草摺引」も含めて三曲とも歌舞伎初心者の方でも分かりやすく、なおかつじっくりと見ることができる演目で、なかなかよかったです。
それと、今年は関西の歌舞伎の興業が少なくて淋しかったので、この公演があって嬉しかったです。
来年以降、もっと歌舞伎をやってほしいな~。
来月は先斗町歌舞練場での顔見世を観に行きますが、南座の耐震工事も無事に終わってほしいですね。
夕霧名残の正月
21日に、七月大歌舞伎の昼の部「夕霧名残の正月」を幕見してきました。
ホントに短い舞踊なんですが、美しくて詩情にあふれていて、いい一幕でした。
物語は「吉田屋」に出てくる夕霧と伊左衛門のお話なのですが、こちらのほうが先にできた話で、史実どおり夕霧は若くして亡くなっています。
恋人の死に目に会えなかった伊左衛門の元に夕霧があらわれ、二人で過ぎし日のように幸せに踊るが、彼女は幻で、四十九日の日に伊左衛門に会いに来たんだな…と皆が思いを馳せます。
たったこれだけといえばこれだけなんですが、藤十郎さんの伊左衛門の優美さ、雀右衛門さんの夕霧の透明感にうっとりと酔い、最後にはじんわり泣かせる素敵な作品です。
雀右衛門さんがこれまた亡くなった先代によく似ていて、一瞬、さまざまな狂言で共演した藤十郎さんに四代目が『せがれもお世話になります』と会いに来たかのように錯覚してしまうほど(藤十郎さんご本人は伊左衛門になりきっているのでそんな感覚はないかもしれませんが)。
ほか、ザ・上方な秀太郎さんのおふさ、優しい風情の友右衛門さんの三郎兵衛、息がぴったりな廣太郎さん・廣松さん兄弟の幇間なども楽しく見ることができました。
本当に美しい舞踊なので、また何かの機会に見れたらいいなと思います。
七月大歌舞伎 夜の部
3月以来、久々の歌舞伎鑑賞に行ってきました!
今年の関西は歌舞伎が少ないので、ほんと待ちに待ってました。
演目は「鬼一法眼三略巻」から「菊畑」、「口上」、「鳥辺山心中」「芋堀長者」の4つ。

まずは「菊畑」。
古典の魅力満載で面白かったー!
鬼一、知恵内(実は鬼三太)、虎蔵(実は牛若丸)それぞれにドラマがあって、それが互いに絡み合っているのも面白いですね。
今回の「菊畑」は見取狂言ですが、この後の段には「一条大蔵譚」もあるので、一度通し狂言で見てみたいなと思いました。
梅玉さんの虎蔵の若さ(いつまでも前髪の若衆が似合うなあ!)と匂やかな所作にホレボレ。ほんとに美しいですね。「芸の力」というのはこういうものなんだというお手本を見せてくれた感じ。
橋之助さんの鬼三太は、以前に「一条…」で鬼次郎を見たのでちょっと紛らわしいんですが(兄弟の役なので)、爽快な繻子奴がぴったり。最後の見得はまるで浮世絵から抜け出してきたような姿でハッとしました。
そして歌六さんの鬼一。やっぱり声がいいな~!鬼三太と実は兄弟という設定なので、あまり枯れすぎず、生き別れの弟たちに対する情愛をにじませたところがよかった。
孝太郎さんの皆鶴姫は積極性がほほえましくて可愛く、また、後半に覚悟を見せるところはキリリとしていたと思います。
亀鶴さんの笠原湛海も、出すぎないようにしつつ敵役の憎らしさを漂わせて好演です。

そして「口上」
今回は雀右衛門さんの襲名を記念しての口上です。
病気によって休演がつづいている我當さんも出演されていて感動!ゆっくりと回復されているようで嬉しいです。
皆さん比較的真面目な口上だったのですが、先代の雀右衛門さんにいかにお世話になったか、上方ゆかりの雀右衛門の名跡を継ぐ当代が大阪生まれであることがいかに嬉しいか(ちなみに梅玉さんのお名前も上方ゆかりで、東京生まれながら「上方の狂言も積極的にやっていきたい」とおっしゃっていて頼もしかったです)、また当代がとても優しい人柄であることを述べられていて、温かい雰囲気の口上でした。

お次は襲名披露狂言の「鳥辺山心中」
大正時代に作られた新歌舞伎ながら、古典の世話物の味わいもある作品です。
京都で武士が間違いを起こすという設定は「ぢいさんばあさん」に似てますね。
とにかく、ヒロインのお染が哀れで哀れでしかたなかった。
半九郎に「半さま、もっとしっかりして下さい!」と言いたくなってしまうくらい(笑)。
こういう、男がバカをやったせいで、何の罪もない無垢な女が道連れにならなきゃいけないのは辛すぎるなぁ…。
それにしても、雀右衛門さん、時々ハッとするほど先代に似てこられましたね!
私は先代は映像でしか見たことがないんですが(私が歌舞伎を見始めた頃にはもうかなり高齢で、入院されたりしていたので)、目元の感じがそっくりです。

最後は「芋堀長者」
芋堀藤五郎の橋之助さんがとっても可愛らしくてほのぼの。
友達治六郎の錦之助さんとのわちゃわちゃしたやりとりも可愛いですね。
最初のあたり、松ヶ枝家後室の友右衛門さんと腰元の芝のぶさん以外は、緑御前の児太郎さん、魁兵馬の種之助さん、菟原左内の宗生さんという若手3人でちょっと「不安になるくらい若い」とか思ってしまったんですが、演じ始めると若くてもさすがにプロの役者。舞も思ったより美しくてさすがだなと思いました。
そして、最後にみんなで踊る芋堀の踊りがめっちゃ可愛い~!
藤五郎と緑御前のラブラブ感がいいんです。
やっぱり本来の自分を出せるのが一番素敵なんですよね。
船乗り込み
七月大歌舞伎を前に、毎年恒例の船乗り込みがあります。
ずっと行きたいなと思っていたんですが、今年初めて行くことができました。
今年はあいにくの雨。しかも、八軒家浜から役者さんが乗り込んだ辺りから大雨(難波の戎橋で生中継してました)。
2時過ぎから戎橋で待ってたんですが、着くのは3時40分頃とのこと。
近くで買い物をしたりして待った後、戎橋の下のとんぼりリバーウォークに行って到着を待ちました。
その間に、松竹座の案内係のお姉さんから紙吹雪やテープをもらったので、近くにいた人と分けてスタンバイ。
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紙なので、雨にぬれないようにするのが大変…。
生中継を見ていて分かったんですが、お姉さんたちはかなり遠くまで配りに行ってたみたいですね。ごくろうさまです。
40分になって、船で演奏している鳴り物の音はするものの、船はなかなか現れず、4時前になってようやく到着しました!
真ん中にいるのが今回襲名披露される五代目雀右衛門さんです。
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(人がたくさんいるので、顔が写りにくいように少し小さめにしています)
船着場のすぐ前にいたので、役者さんたちがめちゃめちゃ近くて緊張してしまいました。恥ずかしくて目を合わせられない!
でも手を振ったり、紙吹雪を撒いたりしましたよ。紙テープはあんまり上手に投げられなかったけど…。
あ、あと「鴈治郎さんが手を振り返してくれた」「亀鶴さん、近くで見る方がかっこいいな」とか思ってた(笑)。
テレビや新聞の撮影が終わって、役者の皆さんが船から降りてこられるんですが、その時に贔屓の種之助さんも間近で見られてよかった!(でも緊張した)
その後、松竹座前で花束贈呈と式典がありました。
船には乗ってこられなかった藤十郎さん・竹三郎さん・秀太郎さんのベテラン勢にもお目にかかることができて感無量です。
橋之助さんと次男の宗生さんもいたのですが、後ろにいたおっちゃんが「あの端におるのは橋之助のとこの坊主や」と言っていて、「友達の子どもかいっ!」と思わずつっこみたくなっちゃいました(笑)。
まあ、こういう親近感が大阪のノリなんやけどね。

雨で指の腹がシワシワになるくらいでしたが、見に行けてよかった。
来年は晴れたらいいな。